バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
第21話:同じね
「初めまして、鷹木慧と申します」
「どうも、詩織の兄です」
新橋の一角にある、カジュアルな焼き鳥屋。
大阪から出張でやって来た兄との食事の席で、二人は丁寧にお辞儀を交わした。
兄から連絡があったと何気なく伝えた時、鷹木が『せっかくだからご挨拶したい』と申し出てくれたのだ。
「はいこれ。お土産の豚まん」
「わーい、ありがとう」
兄から差し出された紙袋を受け取り、詩織の顔が一気に綻む。列に並ばないと買えない大阪の人気商品で、詩織の大好物だ。
笑顔でやり取りする兄妹をよそに、鷹木は肩を硬くこわばらせて緊張感を隠せない。
「お兄さん、何を飲まれますか?」
「お兄さん、串のお好みはありますか?」
「お兄さん、おしぼりをどうぞ」
問いかけが、いちいち固い。
「慧さん、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
詩織が思わず笑ってしまうが、鷹木は変わらずてきぱきと小皿や箸をテーブルの上に配っていく。
「「乾杯」」
カシャン。
グラスの重なる軽い音が響いた。冷たいビールを一口喉に流し込んだ兄が、居住まいを正す。
「いやぁ、鷹木さん。両親に代わってお礼を言わせてください。詩織がいろいろとお世話になって、本当にありがとうございました」
深く頭を下げる兄の姿に、詩織の胸がズキリと打つ。
「いえ、やめてください。弁護士として当然のことをしたまでです」
「こいつ、家族には何も言わないから。そんな酷いことになってただなんて……俺たち全然気づいてやれなくて」
「ごめんお兄ちゃん……」
詩織はグラスを見つめたまま、小さな声で謝るのがやっとだ。
家族には、いの一番に報告するべきだったのだろう。助けを求めるべきだったのだろう。
しかし、大切に思ってくれる家族だからこそ、心配をかけたくなくて言えなかったのだ。
「彼はすでに起訴されています。裁判はこれからですが私がしっかりと引き受けますし、ストーカー規制法における接近禁止令も発令されました。詩織さんに近づく事はできません」
鷹木が、詩織の隣で真っ直ぐに背筋を伸ばし、力強い声で言葉を継いだ。
「もちろん、絶対に安全だなんてことはありませんが……でも、全力で僕が守ります」
胸を張って言い切ってくれる彼の横顔を見つめ、詩織の心に温かい灯がともる。自然と頬が緩んだ。
兄は深く頷いてから、もう一度、ビールグラスを掲げた。
「もう一緒に住んでるんだって?」
「あ、すみません、事前にご挨拶もせず……」