バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
「義実家のご家族との関係はいかがですか? お母様がお一人、と書いてありますが……」
「良くはありません。明確な嫌がらせなどはされませんでしたが、嫌われていると思います」
義父は数年前に亡くなっており、彼は義母と二人で住んでいた。
「『どうして介護士なんかと』とか『たかちゃんはエリートだからあなたは玉の輿ね』などと言われました」
鷹木がぴたりと動きを止める。顔を見ると、眉間に皺が寄せられていた。
「詩織さん、その言葉は十分『明確な嫌がらせ』に当たります」
「そ、そうですか?」
「ええ。失礼ですが、配偶者の方は何のお仕事を?」
「公務員です」
「……国家公務員? キャリア組ですか?」
「いえ、市役所です。今は市民課に」
鷹木はものすごい勢いでパソコンを打ったかと思うと、しばし画面を見つめる。
「……なるほど、エリートね」
口の端だけを、少し上げる。
「これまで彼とのやり取りや、言われた言葉などを記録したものはありますか? 日記やスマートフォンのメモでも構いません」
「あ……はい。毎日ではないですが、彼が帰ってきた日の出来事や、言われたことをノートに書いてあります。改善しなきゃと思っていたので。あと家計簿も。一応、両方とも持ってきました」
「素晴らしい。それはすべて証拠になります。ぜひ、見せてください」
鷹木はそう言って詩織の手元に視線を落とす。ふと、動きを止めた。
視線の先は、詩織の荒れた手だ。
日々、介護の現場で水仕事や消毒を繰り返し、自宅でも日々完璧な家事をと追われ続けた詩織の指先は、ひび割れて赤く荒れていた。
貴大から『汚い手で触るな』と罵られたことのある、詩織自身もコンプレックスに思っている手だ。
突然、先ほどこの荒れたままの手で、鷹木に触れてしまったことを思い出した。
詩織が慌てて袖口で手を隠す。
気持ち悪いと、思われなかっただろうか?
鷹木は、ポケットから小さなチューブを取り出す。見るからに高級そうなハンドクリームだ。それを、そっと詩織の前に置く。
「もしよければ、どうぞ。仕事柄手荒れには気を使っているのですが、薬用で、非常に効果があります」
「でも、こんな高そうなものをお借りするわけには……」
「私の気が済まないのです。……いえ、依頼人の体調管理も弁護士の仕事のうちですから」
鷹木はわずかに視線を彷徨わせながら、そう言い切る。
「……ありがとう、ございます」
詩織はそっと、チューブに手を伸ばす。
なぜ彼がここまで自分に対して親身になってくれるのか、その瞳の奥にある奇妙な熱の正体が分からず、詩織の胸は小さくざわめいた。
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