忘れられないひと〜結婚の挨拶に行った先の継母は、私が昔追い出した父の恋人でした〜
8.現在
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圭介からのメールに返信できないまま、時間だけが過ぎていった。
帰宅途中、近所のコンビニへ足を向けた。
――あっ……、
けれど入ろうとして、レジ待ちの列に元カレの姿をみつけ慌てて隠れた。
幼なじみの元カレは、私の部屋の窓からも見える分譲マンションに住んでいる。
母親同士が友人で、物心がつく前から家族のようなつきあいだった。
恋人になった境目もはっきりしないまま、大学生になった最初の夏、もうやめようか、というニュアンスの言葉を彼が使い、それもそうだね、と私が頷いて、友達に戻った。
別れて気づいた。そもそも私たちは最初から最後まで友達だったと。
コンビニを出た元カレが曲がり角を過ぎたことを見届けて、店の中へ入った。
雑誌を立ち読みし、買う物を無理矢理探しレジに並ぶ。
――家に帰れば“孤独”と向き合う残酷な時間がやってくる。それを少しでも遅らせたくて入ったコンビニなのに、たいして時間稼ぎにはなっていなかった。
重い気持ちを引き連れて歩いていると、ふたつめの角を曲がったところでハイヒールの足が近づいてきた。膝丈の白いスカートがふわりと揺れた。
「おかえり」
ハスキーな声の主は幼なじみの元カレ、道哉だ。
「……ただいま」
あきらめて、返した。
道哉が女装するようになったのは私と別れた数カ月後だ。
テレビ局のスタッフから声を掛けられバラエティ番組に出演した。――女性の中に女装させた男性を紛れこませて出演者に正解を当てさせる、という内容だった。それがきっかけで、道哉は女装に目覚めた。
道哉は私の前に立ち、自信満々に言った。
「その辺の女より可愛いだろ」
当然「その辺の女」には私のことも含まれている。
「俺のこと避けたよな、さっき」
付け睫毛の大きな目が私を見る。