忘れられないひと〜結婚の挨拶に行った先の継母は、私が昔追い出した父の恋人でした〜
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「心菜、説明させて」
圭介が家の前に現れ出してから一週間が経った。
「会社はどうしたの?」
私はとっくに根負けしていた。
有給休暇を消化中の私は外出しない日もあるし、出掛けたままの日もある。けれどガレージにいつも圭介がいるのだ。
門扉に手を掛けながら、私は慎重に聞いた。
「まさか休んでるの?」
聞かずにはいられなかった。
「友達とのつきあいは?」
「……」
圭介から友人を紹介されたときのことだ。
――「こいつ、全然連絡してこなくなったんすよ。誘っても、カノジョさんと会えるかもって断るし。約束してんのかって聞いたらしてないって。意味不明っすよね」
冗談に変えて不満を言っていた。
「会社もせっかく希望のとこ入れたのに、全然やる気ないし。カノジョさんが好きすぎてやばいっすよ、こいつ」
友人の声は届かないのか、このときも圭介は私の世話ばかり焼いていた。
「――圭介、よく聞いて。仕事も友達も必要で大切なの。失くしてからじゃ遅いの」
「そんなことどうだっていいし今関係ないよ。それより俺たちのことを」
「よくない」
わかってほしくて語気を荒げた。
「今ある大切なものを守ってほしいの。私のために失ってほしくないの」
「心菜以上に大切で、守りたいものなんて俺にはない」
「……」
「心菜だって俺だけだろ? 仕事も友達も心菜は必要ないと思ってるよな。だったら俺だって」
「……それは、……それはね、圭介」
声が震えた。
想像を超えて圭介は私のことを見ていた。そして真似ている。
「……」
圭介の言う通りだ。
私は仕事への情熱もなく、夢中になれる趣味もない。友達もいない。でも子供の頃からそうだったわけじゃない。あの日――、
若葉さんの友達が私に真実を教えてくれたあの日、消えてしまっただけだ。
……私は同性と深く交われなくなった。
怖かった。
私がしたことを全部知っていて何事もなかったように笑っていた若葉さんと、私の本性を暴露するショートカットの女の人がいろんな人の顔で現れて、私を覗き込むから。
「もう帰って。二度とここへは来ないで。私たちは終わったの」
伸びてくる手から逃げた。
やっぱり私は、圭介にだけは嫌われたくない。だから本当の私を知ってしまわないでほしい。
「帰って! 帰ってよ!」
「落ち着いて、心菜」
「私の言ってること分からない? もう来ないでって言ってるのに!」
揉みあうような状態の私たちの方へ、足音が近づいてきた。
「――ココ」
道哉だった。
!
圭介の行為をやめさせるために道哉に『恋人の役』を頼んだことを、すっかり忘れていた。
「好きな人ができたのっ」
近づいてきた道哉の腕を取った。「この人とつきあうから」
「……」
道哉はシャツの脇腹を掻きながら圭介に向かって、どうも、とだけ言った。