忘れられないひと〜結婚の挨拶に行った先の継母は、私が昔追い出した父の恋人でした〜

15.矛盾の矛先

 
「俺は信じない」
 圭介の強い声は私を切なくさせた。

「本当のことよ」
 私はその声をなんとか振り払う。

「心菜は俺のことすげえ勘違いしてる。全然きれいじゃないよ。っていうかそんな人間いるかよ。俺はあたりまえにひねくれてるしズルい――」
「何も聞きたくない」
 圭介の言葉を遮って門扉に手をかけた。

「聞いて」
 圭介が回り込んできた。
「どいて」
「いやだ」
「家に入れない」
「いやだ」
 私は道哉の腕を取って通りへと出た。
「じゃあ、いい」
「待って!」
 圭介が弾かれたように私たちの前に飛び出してきた。
 埒が明かない――。

 私は感情を殺し圭介を見ながら道哉を抱きしめて、その頬に素早く頬を寄せた。
 呆然とする圭介の前で、きっかり五秒数えて身体を離す。

「信じないのは勝手だけど、この人とつきあい始めたのは事実なの。これがその証拠。だから圭介のこと本気で迷惑なの。もうここに来るのもやめて。私の幸せを壊さないで」
 言うだけ言って道哉の手を引いた。圭介は、もう追ってこなかった。

「……いいのかよ」
 耳元の声に無言で頷いて道哉を引っ張った。
 圭介の傷ついた顔がいつまでも目に焼きついて離れない。けれど振り向いちゃいけない。
 ――これで、いいの。
 
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