忘れられないひと〜結婚の挨拶に行った先の継母は、私が昔追い出した父の恋人でした〜
「なんで?」
駄々っ子のように詰め寄った私に、道哉は首筋を掻きながら迷惑そうに言った。
「つーか、無理」
「……なにそれ」
――私には女装が趣味だからってつきあいを反対する親もいないし、あんたのこと家族同様に理解してる。それなのにどうしてよ?
半分脅迫的に迫った。
道哉は、公園は蚊が多いなあ、と緊張感の欠片もないことを言い、「そういうことだから、じゃあな」と軽く手をあげて歩き出してしまった。
去っていく背中は緩んだままだった。
私はひとり取り残されて――、時間を掛けて重大な事実に行き着いた。私は同じ相手に二度も振られたのだ。
「あんたはデリカシーがないの。これ、絶対他の女にやっちゃダメなやつだからね」
私は“無視”をあきらめて、説教に切り替えた。
正直、あっさり振られた一瞬は頭に血が上った。けれどそのうち冷静になった。
……確かに、ありえないわ。
告白しておきながら自分に突っ込んだ。
ヤケになって幼なじみの親友に甘えただけだ。
ただ、振られたのは癪だった。
「これでチャラだろ。俺も振られたままじゃ悔しいから振ってやったんだって」
「はあ? 私がいつあんたを振ったっていうのよ」
聞き捨てならない言葉に眉間が寄っていく。
「最初のときも振られたのは私なんですけど」
「いーや、俺だ」
「ちょっと待ってよ。記憶の改ざん反対!」
道哉と肩を並べて歩いていた。
どちらともなく日陰へと足を向ける。
三叉路の角にやや広めの歩道がある。ときどき近所の主婦や散歩中の老人や子供たち、学生カップルが立ち話をする地域住民には馴染みの一角だ。
道哉に続いて街路樹の下に入った。