忘れられないひと〜結婚の挨拶に行った先の継母は、私が昔追い出した父の恋人でした〜

17.カフェレストラン小峯

 
「こういうの芋づる式っていうのかな、いろいろ思い出し始めたんだけど。言ってみてもいいか?」
「言って、……全部、言って」
 上擦った声で懇願した。暑いのに、震えが止まらない。
 
「おまえが前の男とつきあってるとき、『待ち合わせ場所に走っていくおまえを少年が追いかけていくの見た』って話したの覚えてる? 俺も気になって付いていったら、おまえが男の車に乗り込むのも隠れて見てたって」
「聞いたような気もする……、なにかの偶然でしょって言った気が……」
「そのときの少年、圭介じゃないか?」
「えっ」
「なあ、あれは? 俺らが中三の頃にさ、校門で俺らのことを探ってた子供がいたってやつ」
 それははっきりと覚えている。
 メモ帳を持ち、私と道哉のことを下校の生徒たちに聞いて回る男の子がいると噂になったことがあった。私にも道哉にも心当たりがなく、不思議だね、と言い合ったままその記憶は忘却の彼方へ運ばれていった。

「もしかしたら、俺らが知らないだけでもっとあるのかも」
「……どうして、わかんない。意味が、わかんない」
 こめかみのあたりを指先で押さえた。整理しなきゃ、と思うそばから疑問が覆いかぶさってくる。 
「そういえば、おまえらはどういう出会い方をしたんだっけ?」
「!」
 道哉の問いかけに全身が粟立った。
 まさか圭介は最初から、すべてを知っていた……? 
  
「どこ行くんだよ、落ち着け、ココ」
 腕を掴まれても、自分の足が動き出していることに意識が向かなかった。
「落ち着けないよっ。じゃあ、あの手紙は圭介なのっ? 初めから若葉さんと一緒にっ、私をっ」
「手紙ってなんだよ」
 私はただただ首を振った。
 ……やだ、やだ……、
 道哉の質問に答える余裕はなかった。

「こうなったら圭介本人に聞くしかない。なんの目的で近づいてきたのか、はっきりさせよう」
 私は怯え、首を横に振った。……確かめる? ……私が? 
 無理だ。
 
「わかった。じゃあこうしよう」
 道哉は、俺に考えがある、と言った。
「同じ日、俺は圭介と会うようにする。場所はおまえらの待ち合わせ場所の近くの“小峯”でどうだ。あそこならすべての席が仕切られてて、覗き込もうとでもしなきゃ他の席は見えない。だからココ、おまえも来るんだ」
「わ、私も……?」
 慄いた。
「俺たちは先に着いて、背中合わせの席で待機する。俺が入口からすぐ見える席に座れば、圭介は迷わず俺のところへくるはずだ。そもそも継母と会う日だ、おまえがいるなんて思わない」
「でも……」
「心配ない。俺が全部白状させるから。継母と会うかどうかは、それから決めればいい」
「……」
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