忘れられないひと〜結婚の挨拶に行った先の継母は、私が昔追い出した父の恋人でした〜

23.Daughter



 弟は帰宅してすぐ彼女のアパートへ戻ってしまい、父も出掛けてしまった。弟はともかく、父が私たちに気を利かせたのは間違いなかった。

 
 静かな家の中でふたりきりになった。

「ビール飲む?」
 尋ねると、圭介が「いらないよ」と小さく言った。
 聞く準備は出来ている――と、その表情から伝わってきた。

「――あのね」  
 緊張を隠して、圭介に向き直った。
「今日、若葉さんに会って思った。やっぱり私、無理みたい。圭介とは結婚したい。でも圭介の家族とはつきあえない。それが私の出した結論。――圭介、私を選んでくれるよね」
 圭介に最終決断を預けたりしない。
「圭介は自分の家なんだから、好きな時に好きなだけ帰っていいからね。でも私と、私の家族は圭介の家族には会わないし、会わせない」

 圭介は私を見ていた。
 私も圭介を見ていた。
 
 圭介は静止をといて、屈託なく笑った。
「心菜、奇遇だね! 俺もそれ提案しようと思ってた」
「そっか」
「うん」
 私たちはすべて飲み込んで、未来を選んだ。


「俺さ、心菜が母さんと会ってるときに、心菜のお父さんに電話したんだ。で、俺が誰の息子で、そんなこととは関係なく、俺は心菜を心から愛してるってことを話した」
 父が不用品を処分していた理由が分かった。
 ――あれは父からの意思表示と祝福だったのだ。

「なるほど。今日はお寿司は圭介のおかげだったわけね」
 わざと冗談にした。
「あっ、そうなる?」
 へへ、と圭介は頭を掻いた。
 
 
 
 
 


   +

 次の夜、
 ベランダにテーブルを出し、夜風に吹かれながら父と晩酌をした。
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