忘れられないひと〜結婚の挨拶に行った先の継母は、私が昔追い出した父の恋人でした〜
26.別れの時
私を見るたびに怯え、顔を覆って震えるまみちゃんに「圭介は大丈夫だから」を繰り返していた。
本音では、圭介を傷つけられたことを許せはしない……それでも、壊れてしまったまみちゃんの、その絶望だけを見つめようと決めた。
「私、女の子の友達がいないの」
葛藤を脇に置き、伝えることに集中した。
「まみちゃんが私に優しくしてくれたとき嬉しかった。くすぐったかった。でも態度に表せなかった……それからね、道哉の彼女がまみちゃんで良かったって、本当に思ったの。そのことも伝えられてなかったよね。――もっとたくさん、話せたらよかった。私が、道哉とまみちゃんの間に入ってふたりを仲直りさせたかった。今になったら、私にはそれができたのにってわかるの。――なにもしなくて、……ごめんね」
痞えながら必死に言った。けれどまみちゃんは蒼白の顔を私に向けた。
「どうして、そんなこと、いうんですか」
まみちゃんは暗い目をしていた。
「もっと、せめてください。わたしは、ひどいことをしたのに」
「まみちゃんだけが悪いんじゃないの」
「わる、い……、のは、わたし、です」
「私も悪いの。まみちゃん、私たち、同じように苦しんだのよ」
「くるしめて、ごめんなさい……」
「そうじゃなくて」
もどかしくて、早口になる。
「まみちゃんも十分傷ついてる、って言いたいだけなの。謝ってほしいわけじゃなくて」
「きずつけた、わたしは、あのとき……」
まみちゃんが自分の両手に目線を落とした。私は慌てて声を張る。
「それはいいのよ、もう。大丈夫なの」
喉が詰まりそうになりながらまみちゃんに語り掛けた。
「未来のために、私たちには出来ることがあって、そのことをちゃんと話したくて私――」
「わからな、い……、わからな……」
まみちゃんは肩をあげて耳を塞ぎ激しく左右に首を振った。
「だ、だ、だ、だ、だ、だ、だだだだだれか、だ、だだ、だ……」
「まみっ」
見守っていた道哉が思わず立ち上がってまみちゃんの名を呼んだ。
私もつられて立ち上がった。
「まみちゃん、もう自分を責めないで。お願い。圭介がそう言ってるの。まみちゃんのこと心配してるの。私も」
立会人と看護師が取り乱すまみちゃんの腕を押さえて面会の終了を告げた。
「ちょ、ちょっと待ってください、もう少しだけ――」
「いい加減にしてください」
「あ――、まみちゃんっ、ま――」
まだ大切なことを何も言えていない。
けれど私はひとり、無理矢理廊下へ出された。
ドアが閉まる一瞬、視界から消えていく私に、まみちゃんは泣きながらも安堵するように肩から力を逃がした。
「……」
私の想いは、まみちゃんには届かないと知った。
この日の帰り道だった。
道哉はひとつの決意を口にした。