末っ子王女はあこがれの(元)魔術師団長に欲情してほしい
 声を詰まらせながらも、アマリアが男の名を呼ぶ。
「エルベルト様!」
 胸の奥に熱いものがこみあげてきて、気がついたときには彼のもとへと駆け寄っていた。
「エルベルト様、起きてください。エルベルト様!」
 彼の肩に手を置いて、動かない身体をゆさぶった。
 碧玉の瞳を、もう一度こちらに見せてほしい。そして「アマリア」とやさしく名を呼んでほしい。
「エルベルト様……?」
 アマリアの呼びかけに答えるかのように、男の瞼がぴくぴくと反応を示し、その目がゆっくり開かれた。
 焦点の定まらない瞳はぼんやりアマリアを見ており、アマリアもまた彼の碧玉に吸い込まれるようにして視線を絡める。
「エルベルト様、ご無事ですか? 会いたかったです……」
 アマリアの目尻からは一筋の涙がつうっとこぼれ落ちたが、エルベルトはいぶかしげなまなざしを向けて、ゆっくり口を開いた。
「おまえは、誰だ?」
 拒絶するような言葉に、まるで冷水を浴びせられたような衝撃がアマリアを襲う。心臓がぎゅっと縮こまり、手足の先に痺れが走る。
「わたしをお忘れですか? エルベルト様……」
 悲痛な声で訴えれば、エルベルトも探るような目つきを向けてくる。
「忘れるも何も、私はおまえを知らない」
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