最弱探偵
【01 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(1)】
・
・【01 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(1)】
・
「虎太郎は本当に龍と比べて出来が悪いなぁ、こんなんで農家が継げるかな、本当に根性ナシで」
僕はなんと! 夜トイレに起きて廊下を歩いている時に、お母さんとお父さんがこんな不穏な会話をしているところを聞いてしまったのだ!
僕は人間には個体差があることを知っているので、重いモノが持てないことは根性ナシではなくて、生まれ持った得手不得手だと知っている。
虎太郎お兄ちゃんに比べて僕は身長が高いし、筋肉質だ。小学六年生の僕は高校生に間違われることもある。でもそれは生まれ持った才能というか、運が良かっただけなので、それだけで虎太郎お兄ちゃんの出来が悪いと言われたら、激怒り案件だ。
つい僕はちゃんと言ってやろうと思い、お母さんとお父さんがそう会話している居間の扉を開けて開口一番、
「虎太郎お兄ちゃんの出来が悪いなんて言わないで! 虎太郎お兄ちゃんは良い高校に進学して東大に入って日本史上最高の首相になるんだよ!」
するとお母さんもお父さんもプリプリ笑いだして、もう口から変な黄緑の卵を産むくらいのプリプリ音(ぷりぷり・おん)だった。
お父さんが一回汚く「ゲハー!」と笑ったところで、
「虎太郎は中学卒業したらすぐに農家やるに決まってるだろ!」
僕は衝撃的だった。まさかそんなことになっているなんて。絶対適材適所的にありえない。というか、
「じゃあ僕はっ?」
お母さんはあっけらかんと、
「そりゃ龍も中学卒業したら農家じゃないの? うちの手伝いしっかりしてねー!」
お父さんは何故か鼻高々に、
「龍は手伝いじゃなくて仕事だ! 一人前の給料だ! で、虎太郎がお手伝いさんレベルだからバイトごときで十分だ!」
と言うと、お母さんも爆笑して、一体何なんだこの両親は、と思ってしまった。
そりゃ僕が農家することは僕も公認だけども、虎太郎お兄ちゃんも本当にそれを了承しているのだろうか。
僕はトイレを済ますとすぐさま部屋に戻り、二段ベッドの下にいる虎太郎お兄ちゃんに話し掛けた。
「虎太郎お兄ちゃん! 農家やるって本当っ?」
すると虎太郎お兄ちゃんはムニャムニャ言いながら目を開けた。その時に『そうだ、今は夜なんだから虎太郎お兄ちゃんは寝ていたんだ』と思い出して、本当に申し訳無く思った。
虎太郎お兄ちゃんは目を覚ましてしまい、
「えっと、話は何……?」
と言いながら、メガネをかけた。
僕はまず最初に、
「寝ていたこと忘れて起こしちゃってゴメンなさい!」
「そんなことはどうでもいいんですよ、私は所詮最弱なので……」
僕は虎太郎お兄ちゃんのこの”最弱なので”的な卑下が大嫌いだ。
過去にはずっと指摘していたけども、自己肯定感が著しく低いのか、言うことをやめないので、もう無視することにしている。
虎太郎お兄ちゃんは優しい口調で、
「というより起こしてまで、聞きたいことがあったということだと思いますし」
虎太郎お兄ちゃんに促されてハッとした。
早く本題を切り出さないとっ!
「えっと! あの! 虎太郎お兄ちゃんって! 中学卒業したら農家やるって本当っ?」
僕は固唾を飲んで、次の言葉を待つ気でいたのに、虎太郎お兄ちゃんは矢継ぎ早にこう言った。
「そうですよ、両親はずっとそう仰っていますからね」
返答の早さとその答えに目を見開きつつ、
「何で! 虎太郎お兄ちゃんは頭が良いんだから良い高校行って東大行くんでしょ!」
「東大まではそもそも絶対行けませんが、両親は早く働かせたいという考え方なので仕方ありません」
「そんな! 今はもう令和だよ! 頭良い人は学歴重視するんだよ!」
「そもそも私はそこまで頭が良くありません。効率良くモノを運ぶことも出来ませんし」
「それは筋力がまだ足りていないだけでしょ! 中学一年生なんだから、そもそも普通はそんなもんなんだよ! 早熟な僕と比べられちゃって!」
虎太郎お兄ちゃんは「ハハッ」と優しく笑うと、
「私の話なんてどうでもいいですから、早く寝ましょう。龍も私も、明日も学校でしょう」
「学校だから寝る……」
と返事してから、二段ベッドの上で寝転がったんだけども、僕はまだ全然納得いっていなかった。
・【01 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(1)】
・
「虎太郎は本当に龍と比べて出来が悪いなぁ、こんなんで農家が継げるかな、本当に根性ナシで」
僕はなんと! 夜トイレに起きて廊下を歩いている時に、お母さんとお父さんがこんな不穏な会話をしているところを聞いてしまったのだ!
僕は人間には個体差があることを知っているので、重いモノが持てないことは根性ナシではなくて、生まれ持った得手不得手だと知っている。
虎太郎お兄ちゃんに比べて僕は身長が高いし、筋肉質だ。小学六年生の僕は高校生に間違われることもある。でもそれは生まれ持った才能というか、運が良かっただけなので、それだけで虎太郎お兄ちゃんの出来が悪いと言われたら、激怒り案件だ。
つい僕はちゃんと言ってやろうと思い、お母さんとお父さんがそう会話している居間の扉を開けて開口一番、
「虎太郎お兄ちゃんの出来が悪いなんて言わないで! 虎太郎お兄ちゃんは良い高校に進学して東大に入って日本史上最高の首相になるんだよ!」
するとお母さんもお父さんもプリプリ笑いだして、もう口から変な黄緑の卵を産むくらいのプリプリ音(ぷりぷり・おん)だった。
お父さんが一回汚く「ゲハー!」と笑ったところで、
「虎太郎は中学卒業したらすぐに農家やるに決まってるだろ!」
僕は衝撃的だった。まさかそんなことになっているなんて。絶対適材適所的にありえない。というか、
「じゃあ僕はっ?」
お母さんはあっけらかんと、
「そりゃ龍も中学卒業したら農家じゃないの? うちの手伝いしっかりしてねー!」
お父さんは何故か鼻高々に、
「龍は手伝いじゃなくて仕事だ! 一人前の給料だ! で、虎太郎がお手伝いさんレベルだからバイトごときで十分だ!」
と言うと、お母さんも爆笑して、一体何なんだこの両親は、と思ってしまった。
そりゃ僕が農家することは僕も公認だけども、虎太郎お兄ちゃんも本当にそれを了承しているのだろうか。
僕はトイレを済ますとすぐさま部屋に戻り、二段ベッドの下にいる虎太郎お兄ちゃんに話し掛けた。
「虎太郎お兄ちゃん! 農家やるって本当っ?」
すると虎太郎お兄ちゃんはムニャムニャ言いながら目を開けた。その時に『そうだ、今は夜なんだから虎太郎お兄ちゃんは寝ていたんだ』と思い出して、本当に申し訳無く思った。
虎太郎お兄ちゃんは目を覚ましてしまい、
「えっと、話は何……?」
と言いながら、メガネをかけた。
僕はまず最初に、
「寝ていたこと忘れて起こしちゃってゴメンなさい!」
「そんなことはどうでもいいんですよ、私は所詮最弱なので……」
僕は虎太郎お兄ちゃんのこの”最弱なので”的な卑下が大嫌いだ。
過去にはずっと指摘していたけども、自己肯定感が著しく低いのか、言うことをやめないので、もう無視することにしている。
虎太郎お兄ちゃんは優しい口調で、
「というより起こしてまで、聞きたいことがあったということだと思いますし」
虎太郎お兄ちゃんに促されてハッとした。
早く本題を切り出さないとっ!
「えっと! あの! 虎太郎お兄ちゃんって! 中学卒業したら農家やるって本当っ?」
僕は固唾を飲んで、次の言葉を待つ気でいたのに、虎太郎お兄ちゃんは矢継ぎ早にこう言った。
「そうですよ、両親はずっとそう仰っていますからね」
返答の早さとその答えに目を見開きつつ、
「何で! 虎太郎お兄ちゃんは頭が良いんだから良い高校行って東大行くんでしょ!」
「東大まではそもそも絶対行けませんが、両親は早く働かせたいという考え方なので仕方ありません」
「そんな! 今はもう令和だよ! 頭良い人は学歴重視するんだよ!」
「そもそも私はそこまで頭が良くありません。効率良くモノを運ぶことも出来ませんし」
「それは筋力がまだ足りていないだけでしょ! 中学一年生なんだから、そもそも普通はそんなもんなんだよ! 早熟な僕と比べられちゃって!」
虎太郎お兄ちゃんは「ハハッ」と優しく笑うと、
「私の話なんてどうでもいいですから、早く寝ましょう。龍も私も、明日も学校でしょう」
「学校だから寝る……」
と返事してから、二段ベッドの上で寝転がったんだけども、僕はまだ全然納得いっていなかった。
< 1 / 25 >