最弱探偵

【02 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(2)】

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・【02 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(2)】
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 僕は虎太郎お兄ちゃんのことが大好きだ。
 お母さんもお父さんも虎太郎お兄ちゃんのすごさを分かっていないから、あんな扱いなんだ。
 まず虎太郎お兄ちゃんはゲームが上手い。農家の手伝いをして両親からもらったご褒美のゲームがクリア出来ないと必ず僕は虎太郎お兄ちゃんにやってもらう。
 するとRPGだろうがシミュレーションだろうがアドベンチャーだろうがアクションだろうが、何でもクリアしてくれるのだ。
 僕は虎太郎お兄ちゃんがゲームをしているところを後ろから見ることが大好きだ。
 でも虎太郎お兄ちゃんは自分の好きなゲームを買ってもらえない。というかお母さんもお父さんも虎太郎お兄ちゃんには何も買ってあげていない。
 勿論ゲームだけじゃない。何から何まで虎太郎お兄ちゃんにはお母さんもお父さんも何も買ってくれないのだ。
 だから虎太郎お兄ちゃんは全部僕のおさがりを使っているため、学校に持っていく水筒も虎太郎お兄ちゃんが、昔僕が好きだったアニメの水筒で、僕は最新式の保温に優れたスタイリッシュな水筒だ。
 これに関して言えば、登校への道で水筒を交換している。ただし、中身も交換になるので、僕はただの水になってしまう。虎太郎お兄ちゃんのほうにはオレンジジュースが入っている。でもまあ虎太郎お兄ちゃんのほうが優秀なので、これが本来の形だと僕は自覚している。
 朝になり、いつも通り目覚めると、勿論虎太郎お兄ちゃんは起きていて、自分の分は勿論、僕やお母さん・お父さんの弁当を作り終えていた。
 お父さんはゲハゲハと汚く笑いながら、台所に立つ虎太郎お兄ちゃんへ、
「しみったれた味付けしてんじゃねぇぞぉ!」
 と耳元で野次を飛ばしていた。しみったれた味付けって何だろうか。いつも虎太郎お兄ちゃんの料理は最高なのに。
 朝ご飯は四人家族全員で食べることになっているけども、虎太郎お兄ちゃんは出来たてを出さないといけないので、最後まで立っている。
 こんな朝から紅鮭を焼いて、すぐにグリルを洗って、虎太郎お兄ちゃんは大変だ。それなのに、お母さんは、
「遅っせぇ、グリル洗うの遅っせぇ」
 とニヤニヤと笑っていて、正直不快だ。お母さんは一度、虎太郎お兄ちゃんがグリル洗うの遅過ぎるからわたしがやりますってなった時、熱過ぎて逃げ出したのに。
 というか本来、グリルって熱が冷めてから、二時間後くらいに洗えばいいのに、なんせ虎太郎お兄ちゃんも中学校があるから、すぐにやらないといけなくて。
 何でこんなに虎太郎お兄ちゃんに強気に出られるのか。こんなにも腕力が全ての家って無いよね、令和で。
 早食いのお父さんはまだグリルを洗っている虎太郎お兄ちゃんのお尻を軽く蹴りながら、
「洗っとけよーい!」
 と言いながら、食べた食器を流し台にすら持っていかず、多分軒先でタバコを吸いに行った。
 お母さんはこれみよがしにデカいゲップをしてから、勿論流し台には置かずに、ソファーに座って録画していた韓流ドラマを見始めた。
 僕はお母さんとお父さんの食器を流し台に持っていて、そのまま洗おうとすると、お母さんがこちらを振り返って、
「ザコにやらせな!」
 と言ってくるわけだけども、僕は無視していつも食器を洗っている。なんせ僕のほうがお母さんより腕力があるので、それ以上文句を言ってこないから。
 グリルを洗い終えた虎太郎お兄ちゃんは少量のご飯しか食べない。勿論食べる時間が短過ぎるというのもあるんだけど、何よりも虎太郎お兄ちゃんが同じように紅鮭を食べていたある日、タバコを買い忘れていてずっと居間にいたお父さんから「働かぬものは食うべからず!」と言われながら、素手で虎太郎お兄ちゃんの紅鮭を一気に食べてしまったことがあって。それ以来、虎太郎お兄ちゃんは自分のおかずを意図的に減らしているのだ。
 僕は正直虎太郎お兄ちゃんには全寮制の高校に入って、勉学に没頭してもらいたいと思っている。現に勉強自体は嫌いじゃないみたいだし。いつも僕は勉強を教えてもらっているから、小学校でも学年一位を争うほどだ。
 もしかしたらそこが良くない可能性もある。僕が文武両道過ぎるから。でも虎太郎お兄ちゃんの教え方は本当に上手くて、僕なんかでもテストで満点が取れてしまうのだ。
 僕は果たして虎太郎お兄ちゃんの何か助けになれているだろうか、と思っていると、虎太郎お兄ちゃんがもう食器を流し台に持ってきながら、
「いつもありがとう、龍」
 と言ってくれて、天にも昇るような気持ちになった。
 やっぱり虎太郎お兄ちゃんから感謝されるだけで僕は本当に嬉しいんだ。
 そんなこんなで登校の準備をして、虎太郎お兄ちゃんと一緒に家を出た。
 僕たちの地域は都会と都会に挟まれた、谷間の田舎なので、小学校と中学校は同じ敷地内にある。
 昔は子供がいっぱいいて、これ全部が小学校だったらしいんだけども、過疎化により、小学校の別棟が中学校になった。
 ので、登校は基本小学生・中学生入り混じって、集団登校することになっている。
 とは言え、中学生は少し生意気になってくるターンなので、一緒に登校しない人もいるんだけども、虎太郎お兄ちゃんは一緒に登校してくれる。
 五月初旬は風が爽やかで、木々も芽吹きだし、爽やかな香りがしてくる。
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