最弱探偵
【14 鋭利な刃物(2)】
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・【14 鋭利な刃物(2)】
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校長先生はすぐさまスマホを取り出して、
「分かりました。生徒全員、この土日は自宅待機にさせているので、多分いるはずです。一時間半あれば全員揃って、そのままピクニックに出れると思います。昨日の夜から今日の朝方にかけて天気が良かったですし、裏山の地面のぬかるみもある程度は乾いているはずです。それなりに水はけの良い土も撒いていますし」
そこから僕たち三人は王茶先生の車でコンビニへ行き、サンドウィッチを買いに行った。その諸経費は全部校長先生が出してくれるらしい。
コンビニで王茶先生が、
「お茶も買ってあげるといいねー」
と言うと、虎太郎お兄ちゃんが、
「いえ。水筒を持ってきてほしいともう言ってしまったので、お茶はいいでしょう」
と断っていた。そう言えば、虎太郎お兄ちゃんはそのあとも校長先生へ水筒を持ってきてほしいと伝えてほしいと念入りに言っていた。
もしかしたら水筒に何かあると思っているのかもしれない。でも、水筒の飲み口の薄くなっているところで刺すとか出来ないような。
コンビニから戻ってくると、もう校門付近に二人の生徒がやって来ていた。
一人の女子生徒は僕らをじろじろ見るなり、
「こんなヤツらがなんなのよー、これなら小百合が探偵やったほうがいいよー、なんせ小百合は女子トイレのトイレットペーパー減り過ぎ事件を解決したんだからー」
すると隣にいた女子生徒がその子を指差しながら、
「それな! 小百合が探偵やったほうがいいっすわ!」
と声をあげた。
何だこの展開……前の高校にも探偵を名乗りたがる他の生徒がいたけども、まさかここにもいるなんて。
王茶先生は少しムッとしながら、
「まあそちらは容疑者だわね、名前は何なの?」
多分自分のことを小百合と呼んでいた、背の低いショートカットの女子生徒のほうが、
「名乗るから自分から名乗ったらー?」
と言ったその時だった。
「マジかよ! 王茶真央選手来てんじゃん! 何で!」
バカデカい声にバカデカい身長の男子生徒が手を振りながら、こっちに近付いて来て、その人は迷わず王茶先生のところに行き、
「俺! 王茶杯、イキイキ柔道教室で優勝していた三宅慎太郎です! 覚えてくれていますか!」
王茶先生はほっこりとした笑顔になり、
「あら、あの時の小学生がこんな大きくなっちゃってー、覚えてるわよーっ、あの大外刈りは見事だったわよーっ」
「うわー! マジかよ! 覚えてくれているのかよ! 今度の夏のインターハイ、優勝するんでチェックしていてください!」
「楽しみにしてるわー」
本当に王茶先生って有名人なんだ……全然なんというか、自慢しないので知らなかった。
王茶先生って自慢しそうな口ぶりの人だけども、そういう類のことは全然しないんだよなぁ、と思ったところで、やけに知識を欲したり、偉ぶっているところは実は無かったりしているし、意外と謙虚なのかもしれない。
「サイン書いてあげてもいいわよー」
「はい!」
……まあ、幼いは幼いけども。
校長先生はスマホを眺めながら、
「一番最初に来そうだった子が来ませんね、まあ早坂先生は校舎内にいて、仕事終わらせてからと言っていたのでいいですけども」
と呟いたところで、小百合さんに「それな!」と言ったほうの、肌の黒いギャルっぽい女子生徒が、
「え! 早坂先生も来んの! 役得なんっすけども!」
小百合さんもニコニコしながら、
「また早坂先生とピクニック出来るのは確かに嬉しいねー」
と言った。どうやら生徒から人気のある先生らしい。
するとリュックサックから出したノートにサインをしてもらい終えたその男子生徒が、
「早坂いんのかよ、アイツ、女子に色目ばっかつかって嫌なんだよな」
と小声でそう言い、女子生徒二人がキッと男子生徒を睨んだが、男子生徒もそのまま応戦って感じで、睨み返した。
王茶先生は雰囲気が悪くなったことを察したのだろう、
「自己紹介わね! おうちゃまは王茶真央よー! 小学校の教諭だわね!」
それに対してすぐに声を出したのが、背の高い男子生徒だった。
「俺は神楽銀介(かぐら・ぎんすけ)! 柔道重量級の日本代表を狙う男だ! 重量級は太さじゃない! デカさで勝つ!」
この男子生徒は二メートルくらいありそうで、それならもっとお金が稼げそうなスポーツのほうがいいのになぁ、とか思ったけども、まあ好きってそういうことじゃないんだろうなぁ。
虎太郎お兄ちゃんが挙手しながら、
「わたしは天音虎太郎、中学一年生です。いろいろ至らないところがある最弱人間ですが、よろしくお願い致します」
と頭を下げ、多分生徒三人は”最弱”という言葉にちょっとギョッとしたみたいだ。
でもすぐに聞き間違いかなみたいな顔をして、女子生徒二人は軽く手を振って応えてくれて、神楽さんも「お! おう!」と元気に声を出してくれた。
じゃあ次は僕かなと思っていると、小百合さんが声を出した。
「あたしは小百合心愛(さゆり・ここあ)ですー」
すぐに隣の肌が黒い女子生徒のほうも、
「鯖井春(さばい・はる)っす!」
と声を出したところで、僕は、
「僕は天音龍で、虎太郎お兄ちゃんの弟、小学六年生です。よろしくお願いします」
と言ったところで、神楽さんが、
「えっ? 高校生じゃないのっ? つかそっちが弟っ? 柔道やろうぜ! 柔道!」
と握手を求められて、一応握手はしつつも、
「僕は中学卒業したらすぐに家の農家を継ぐので」
と言うと、神楽さんはデカい声で、
「マジかよ! じゃあ兄貴のほうはなんなんっ? 長男が継ぐんじゃないのぉっ?」
すると王茶先生がカットインしてきて、
「この探偵業の報酬で虎太郎くんを高校に入れることが目標なんだわ、両親は教育に熱心さが無くて、身体が決して強くない虎太郎くんも本人の意志ナシに農業をやらされそうなんだわね」
いきなりアウティングというか、勝手にそんなこと言われちゃったと思っていると、まず小百合さんが、
「そんなー……それは可哀想ねー……」
鯖井さんは、
「それは良くないっすよ! じゃ! じゃあ応援するっす! 小百合の探偵業は今日オヤスミってことっすね!」
小百合さんは小声で「負けられないけども邪魔はしないわっ」と答えて、神楽さんは、
「マジかよ! じゃあしっかり犯人捜しの協力するしかねぇじゃん! 頑張ろうぜ! 虎太郎くん! 龍くん! そして王茶選手!」
とガッツポーズをしたところで、校門にビタづけで高級車が止まった。
・【14 鋭利な刃物(2)】
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校長先生はすぐさまスマホを取り出して、
「分かりました。生徒全員、この土日は自宅待機にさせているので、多分いるはずです。一時間半あれば全員揃って、そのままピクニックに出れると思います。昨日の夜から今日の朝方にかけて天気が良かったですし、裏山の地面のぬかるみもある程度は乾いているはずです。それなりに水はけの良い土も撒いていますし」
そこから僕たち三人は王茶先生の車でコンビニへ行き、サンドウィッチを買いに行った。その諸経費は全部校長先生が出してくれるらしい。
コンビニで王茶先生が、
「お茶も買ってあげるといいねー」
と言うと、虎太郎お兄ちゃんが、
「いえ。水筒を持ってきてほしいともう言ってしまったので、お茶はいいでしょう」
と断っていた。そう言えば、虎太郎お兄ちゃんはそのあとも校長先生へ水筒を持ってきてほしいと伝えてほしいと念入りに言っていた。
もしかしたら水筒に何かあると思っているのかもしれない。でも、水筒の飲み口の薄くなっているところで刺すとか出来ないような。
コンビニから戻ってくると、もう校門付近に二人の生徒がやって来ていた。
一人の女子生徒は僕らをじろじろ見るなり、
「こんなヤツらがなんなのよー、これなら小百合が探偵やったほうがいいよー、なんせ小百合は女子トイレのトイレットペーパー減り過ぎ事件を解決したんだからー」
すると隣にいた女子生徒がその子を指差しながら、
「それな! 小百合が探偵やったほうがいいっすわ!」
と声をあげた。
何だこの展開……前の高校にも探偵を名乗りたがる他の生徒がいたけども、まさかここにもいるなんて。
王茶先生は少しムッとしながら、
「まあそちらは容疑者だわね、名前は何なの?」
多分自分のことを小百合と呼んでいた、背の低いショートカットの女子生徒のほうが、
「名乗るから自分から名乗ったらー?」
と言ったその時だった。
「マジかよ! 王茶真央選手来てんじゃん! 何で!」
バカデカい声にバカデカい身長の男子生徒が手を振りながら、こっちに近付いて来て、その人は迷わず王茶先生のところに行き、
「俺! 王茶杯、イキイキ柔道教室で優勝していた三宅慎太郎です! 覚えてくれていますか!」
王茶先生はほっこりとした笑顔になり、
「あら、あの時の小学生がこんな大きくなっちゃってー、覚えてるわよーっ、あの大外刈りは見事だったわよーっ」
「うわー! マジかよ! 覚えてくれているのかよ! 今度の夏のインターハイ、優勝するんでチェックしていてください!」
「楽しみにしてるわー」
本当に王茶先生って有名人なんだ……全然なんというか、自慢しないので知らなかった。
王茶先生って自慢しそうな口ぶりの人だけども、そういう類のことは全然しないんだよなぁ、と思ったところで、やけに知識を欲したり、偉ぶっているところは実は無かったりしているし、意外と謙虚なのかもしれない。
「サイン書いてあげてもいいわよー」
「はい!」
……まあ、幼いは幼いけども。
校長先生はスマホを眺めながら、
「一番最初に来そうだった子が来ませんね、まあ早坂先生は校舎内にいて、仕事終わらせてからと言っていたのでいいですけども」
と呟いたところで、小百合さんに「それな!」と言ったほうの、肌の黒いギャルっぽい女子生徒が、
「え! 早坂先生も来んの! 役得なんっすけども!」
小百合さんもニコニコしながら、
「また早坂先生とピクニック出来るのは確かに嬉しいねー」
と言った。どうやら生徒から人気のある先生らしい。
するとリュックサックから出したノートにサインをしてもらい終えたその男子生徒が、
「早坂いんのかよ、アイツ、女子に色目ばっかつかって嫌なんだよな」
と小声でそう言い、女子生徒二人がキッと男子生徒を睨んだが、男子生徒もそのまま応戦って感じで、睨み返した。
王茶先生は雰囲気が悪くなったことを察したのだろう、
「自己紹介わね! おうちゃまは王茶真央よー! 小学校の教諭だわね!」
それに対してすぐに声を出したのが、背の高い男子生徒だった。
「俺は神楽銀介(かぐら・ぎんすけ)! 柔道重量級の日本代表を狙う男だ! 重量級は太さじゃない! デカさで勝つ!」
この男子生徒は二メートルくらいありそうで、それならもっとお金が稼げそうなスポーツのほうがいいのになぁ、とか思ったけども、まあ好きってそういうことじゃないんだろうなぁ。
虎太郎お兄ちゃんが挙手しながら、
「わたしは天音虎太郎、中学一年生です。いろいろ至らないところがある最弱人間ですが、よろしくお願い致します」
と頭を下げ、多分生徒三人は”最弱”という言葉にちょっとギョッとしたみたいだ。
でもすぐに聞き間違いかなみたいな顔をして、女子生徒二人は軽く手を振って応えてくれて、神楽さんも「お! おう!」と元気に声を出してくれた。
じゃあ次は僕かなと思っていると、小百合さんが声を出した。
「あたしは小百合心愛(さゆり・ここあ)ですー」
すぐに隣の肌が黒い女子生徒のほうも、
「鯖井春(さばい・はる)っす!」
と声を出したところで、僕は、
「僕は天音龍で、虎太郎お兄ちゃんの弟、小学六年生です。よろしくお願いします」
と言ったところで、神楽さんが、
「えっ? 高校生じゃないのっ? つかそっちが弟っ? 柔道やろうぜ! 柔道!」
と握手を求められて、一応握手はしつつも、
「僕は中学卒業したらすぐに家の農家を継ぐので」
と言うと、神楽さんはデカい声で、
「マジかよ! じゃあ兄貴のほうはなんなんっ? 長男が継ぐんじゃないのぉっ?」
すると王茶先生がカットインしてきて、
「この探偵業の報酬で虎太郎くんを高校に入れることが目標なんだわ、両親は教育に熱心さが無くて、身体が決して強くない虎太郎くんも本人の意志ナシに農業をやらされそうなんだわね」
いきなりアウティングというか、勝手にそんなこと言われちゃったと思っていると、まず小百合さんが、
「そんなー……それは可哀想ねー……」
鯖井さんは、
「それは良くないっすよ! じゃ! じゃあ応援するっす! 小百合の探偵業は今日オヤスミってことっすね!」
小百合さんは小声で「負けられないけども邪魔はしないわっ」と答えて、神楽さんは、
「マジかよ! じゃあしっかり犯人捜しの協力するしかねぇじゃん! 頑張ろうぜ! 虎太郎くん! 龍くん! そして王茶選手!」
とガッツポーズをしたところで、校門にビタづけで高級車が止まった。