最弱探偵

【15 鋭利な刃物(3)】

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・【15 鋭利な刃物(3)】
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「ごきげんよう」
 そう言いながら出てきた女子生徒。この人もこのピクニックに参加する女子生徒だろうか。綺麗にウェーブがかかったセミロングの金髪で、まさしくお嬢様といった感じだ。ただし、ちゃんと動きやすそうな恰好はしている。
 多分まだあの女子生徒には聞こえない距離と声量で、鯖井さんが、
「一番近くに住んでんのに遅いっすわ、金持ちのくせにっすわ」
 と嫌味のような声でそう言った。
 お嬢様のような女子生徒がこちらに来たところで、
「自己紹介したほうがよろしくて? わたくしは御嬢真麻(おじょう・まあさ)です?」
 と何故か少し疑問形の語尾のあげかたでそう言った。いや知らんよ、多分そうなんだろうけどもさ。
「遅くなりました」
 校舎側から声がして、振り向くとそこには、まあなんというか、中性的かつ中世的な面持ちの、超絶イケメンが立っていて、
「教諭の早坂巡(はやさか・めぐる)です」
 と一礼した。女子生徒は今来た御嬢さん含めた三人とも色めきだったような気がした。神楽さんは小さく舌打ちしたような気がする。
 僕たち三人は改めて自己紹介したところで、王茶先生が、
「じゃあピクニックよー!」
 と言うと、僕たち三人がコンビニから戻って来てから、校長先生の後ろにずっとあった段ボールから校長先生が何かを取り出した。
「これ、三人分のリュックサックです。それとも持っていますか?」
 王茶先生は少し申し訳無さそうに、
「すみませんだわっ、おうちゃまたち三人はリュックサックを持ち歩いているんだわね」
 と言ったんだけども、僕は、
「王茶先生のリュックサックだけは小さいので、こっちの大きいほうで行ったほうがいいと思いますよ」
 と助言すると、王茶先生は、
「確かにそわね」
 と言って、車の中にあるリュックサックの荷物を校長先生から受け取ったリュックサックに移し替え始めた。全員分のサンドウィッチも王茶先生のリュックサックに入れる。その王茶先生のリュックサックの中には、いつの間にか道の駅で買ったミニトマトも入っていて、そのままミニトマトの袋をリュックサックに移し替えた。
「おちゃまー! じゃあ行くだわねー!」
 と声を出して、王茶先生が先頭を歩き出したわけだけども、すぐに早坂先生が、
「あの、裏山こっちですし、ルートはこちらが詳しいので、先頭はぼくが歩きますね。王茶さんと虎太郎さんと龍さんは最後尾を歩いていてください」
 王茶先生は、えへっと笑った。えへっじゃぁないんだよ。
 早坂先生の周りには鯖井さんと御嬢さんがべったりつき、小百合さんはその後ろをやけにキョロキョロしながら歩き、僕がその後ろにつき、王茶先生と神楽さんは並んで歩き、最後を虎太郎お兄ちゃんが歩いている。最後と言っても、虎太郎お兄ちゃんと王茶先生も非常に近い。
 僕はやたら周りを見渡す小百合さんが何だか怪しく感じてしまい、話し掛けることにした。
「小百合さん、何でそんなキョロキョロしているんですか?」
「やっぱり山といったらシャッターチャンス、これは逃せないのねー」
「バードウォッチング的なことですか?」
 と聞きつつも、何か不穏なことを狙っているのかもしれない、と少し僕には緊張感が走っている。すると、小百合さんは小声になり、
「そもそも小百合は鯖井ちゃんと御嬢を怪しんでいるのよー、決定的なシーンを激写して犯人逮捕は小百合がするのー」
 うふうふ笑っている小百合さん。
 僕はふと、
「そもそも被害者の男子生徒って、どんな人でしたか?」
 小百合さんはう~んと少し唸ってから、
「多分、全校女子生徒、嫌いかも」
「どういうことですか?」
「アイツ、告白魔でー。誰にでも告白してはー、ちょっとセクハラめいた発言して反応楽しんでって感じでー」
「かなり嫌ですね」
「そうなのよー、で、鯖井ちゃんは昔から『刺してやるっすわっ!』と意気込んでいて、もしや、ってねー」
「刺してやるって、何か、道具ずっと持ってるんですか?」
「そうそー、鯖井ちゃんはサバイバルが趣味で、十徳(じっとく)ナイフって知ってるー? ナイフやら栓抜きやらいろいろ入っている携帯便利グッズみたいなの持ち歩いていてー」
 十徳ナイフって確か、一つの持ち手の中にナイフの刃だけでなく、はさみ・ドライバー・缶切り・栓抜きなど、様々な工具や道具を折りたたんで収納した多機能な携帯用コンパクトナイフのことだよね。んでもって本当に十種類あるわけではないみたいなものだったはず。十は多いという意味での十。
 僕はおそるおそる、
「そこに血痕とかついていなかったんですか?」
「一応はついていないってー。でも警察がしっかり調べたわけじゃないから、正直分からないけどねー。というか警察沙汰にしないせいで、もう全部証拠隠滅し終えたんじゃないかなー。このピクニックも意味無いかもねー」
 僕はふと、
「でも早坂先生と一緒にピクニック出来て役得って騒いでいませんでしたか? 騒いでいるというのも語弊がありますけども、すみません」
「あー、いいのよー、なんというか女子の中では早坂先生のことはみんな大好きと言っておいたほうがいい不文律があるのよー、早坂先生のアンチは女子全体から叩かれるもんなのよー、だから小百合は鯖井ちゃんに合わせただけー」
 何だか結構状況は複雑らしい。でもあの十徳ナイフを持っている鯖井さんと、お嬢様風の御嬢さんは本当に早坂先生のことが好きみたいで、本当にべったり歩いている。早坂先生もまんざらでもないようで、拒否している様子は無い。
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