最弱探偵
【25 泥棒は日常茶飯事(4)】
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・【25 泥棒は日常茶飯事(4)】
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王茶先生は軽やかな足取りで、ズイズイと外周を歩く。まるで何も悩みが無いかのように。よそ見する時も後ろを確認するんじゃなくて、横を見て普通にバレーをしているところを見ている。ただの見学お姉さんだ。
するとお兄ちゃんが小声で、
「さすが王茶先生です。後ろを一切見ていない。後ろを見ていると、おとりとして怪しいですからね」
そうだったんだ。王茶先生のあれ、合っていたんだ。でもまあ多分偶然だろうなぁ、と少し王茶先生のことは下に見てしまう。なんせ幼過ぎるから。
その時だった。
あの田上さんが王茶先生の後ろにピッタリついたと思ったら……!
「おうちゃまのリュックに触らないでー!」
と言いながら、王茶先生が真後ろを一気に向くと、そのまま真後ろにいた田上さんを大外刈りしたのだ!
バタンと背中から倒れて見事一本、って思っている場合じゃない。
僕はすぐさま王茶先生のリュックを見ると、あのアクリルキーホルダーが無くなっていた。ボールチェーンが切られている。強く引っ張ってちぎったんだろう。
お兄ちゃんはその倒れている田上さんへすぐに、
「ポケットの中を見せてくれますか」
と聞くと、田上さんは、
「何だこの脳筋……」
と言いながら立ち上がり、さっきと同じように、もこもこしているタオルハンカチを見せながら、
「ポケットはいつもこれだけだよ。ポケットの中を探ってもいいぞ。ただし、何も無かったら分かってるよな、この脳筋ゴリラ」
と言って、王茶先生を睨んだ。王茶先生はとぼけたとかじゃなくて、本当に何も分かっていない顔をした。幼過ぎる。
さて、こういうのは奇襲が一番だと思って、僕がすぐさまポケットの中を探ると、
「誰だオマエ!」
と言われてしまったわけだが、ポケットの中には何も無く。
「もう片方も失礼します」
と言ってから、もう片方のポケットも探ったわけだけども、何も無く、がっくりしてしまうと、田上さんは、
「無かったんだろ? なぁ!」
と自信満々の顔をした。
するとお兄ちゃんが、
「そのタオルハンカチの中も見せてください」
と言って、王茶先生は小首を傾げながら、
「タオルハンカチに中なんてないんだわね」
でも田上さんは明らかに不快そうな顔をしてから、
「このタオルハンカチは触ろうとするな! 俺! 潔癖症だから!」
お兄ちゃんは冷静に、
「そのタオルハンカチ、さすがに”もこもこし過ぎています”よね。多分、キャベツの葉のように何重構造になっているんでしょう。タオルハンカチなら多少もこもこしていても怪しく無いですからね。その何重構造にもなってポケット状になっている隙間にアクリルキーホルダーを入れているんじゃないんですか?」
すると田上さんが急に走り出したところで、王茶先生が田上さんの足に飛びつき、そのままアマレスのようにローリングした。
「うわぁぁああ! 顔が! アゴが!」
それでもローリングをやめない王茶先生。左右にローリングしまくりながら、
「タオルハンカチ見せなさーい!」
と叫ぶ。王茶先生、器用だな。ローリングしながら(悲鳴以外の言葉を)喋れるんだ。
「もうダメ! 俺が! 俺が犯人だぁ!」
と史上初、ローリングされながら自白した田上さん。
タオルハンカチを王茶先生が奪ってガサゴソすると、
「おちゃまー! ポケット構造になってるー!」
と言いながら、中からアクリルキーホルダーを取り出した。
そのタオルハンカチをみんなで見ると、マジックテープを互い違いに貼り付けていて、一部分だけがもっこりしないように細工されていた。
王茶先生は何だか自信満々に、
「おちゃまっ、プチヴェールのようにヴェールに包まれていたけども、この盗みはチーム一丸といった感じで結球はしていない、ってところわねっ」
と言ったわけだけども、ちょっと意味が分からなかったので僕は普通にスルーして、
「犯人捕まったね、お兄ちゃん」
お兄ちゃんは強く頷いてから、
「そもそもタオルハンカチを見せながら『ポケットはこれだけ!』と言う動作がおかしかったんです。堂々としようとし過ぎていて。自分を晒し過ぎていて」
それに対して王茶先生が、
「水に晒し過ぎると、栄養という未来の可能性が落ちるということわね! 葉物野菜は!」
と言ったわけだけども、それも普通にスルーしてこの事件は幕を下りた。
ちなみに泥棒を捕まえたことは普通にバレーボールクラブ側からも感謝され、バレーボールクラブ側からちゃんとした報酬金をもらった。
郁恵さんと丑三さんは探偵を呼んだという行動力が認められて、二軍の練習に加わるようになったらしい。そこで郁恵さんはすぐに頭角を現し、一軍昇格したという話だ。やっぱりこんな一軍から四軍まであると、正しく才能を発掘出来るかどうかの問題があるよね、と少し思った。でもまあ郁恵さんは大きなクラブにいて正解だったってことかぁ。いろいろ兼ね合いが難しいなぁ、世の中って。
(一旦、了)
(基本的に一話完結で続いていき、オチは王茶高校に通えるようになる、しかないので一旦終了とさせて頂きます)
・【25 泥棒は日常茶飯事(4)】
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王茶先生は軽やかな足取りで、ズイズイと外周を歩く。まるで何も悩みが無いかのように。よそ見する時も後ろを確認するんじゃなくて、横を見て普通にバレーをしているところを見ている。ただの見学お姉さんだ。
するとお兄ちゃんが小声で、
「さすが王茶先生です。後ろを一切見ていない。後ろを見ていると、おとりとして怪しいですからね」
そうだったんだ。王茶先生のあれ、合っていたんだ。でもまあ多分偶然だろうなぁ、と少し王茶先生のことは下に見てしまう。なんせ幼過ぎるから。
その時だった。
あの田上さんが王茶先生の後ろにピッタリついたと思ったら……!
「おうちゃまのリュックに触らないでー!」
と言いながら、王茶先生が真後ろを一気に向くと、そのまま真後ろにいた田上さんを大外刈りしたのだ!
バタンと背中から倒れて見事一本、って思っている場合じゃない。
僕はすぐさま王茶先生のリュックを見ると、あのアクリルキーホルダーが無くなっていた。ボールチェーンが切られている。強く引っ張ってちぎったんだろう。
お兄ちゃんはその倒れている田上さんへすぐに、
「ポケットの中を見せてくれますか」
と聞くと、田上さんは、
「何だこの脳筋……」
と言いながら立ち上がり、さっきと同じように、もこもこしているタオルハンカチを見せながら、
「ポケットはいつもこれだけだよ。ポケットの中を探ってもいいぞ。ただし、何も無かったら分かってるよな、この脳筋ゴリラ」
と言って、王茶先生を睨んだ。王茶先生はとぼけたとかじゃなくて、本当に何も分かっていない顔をした。幼過ぎる。
さて、こういうのは奇襲が一番だと思って、僕がすぐさまポケットの中を探ると、
「誰だオマエ!」
と言われてしまったわけだが、ポケットの中には何も無く。
「もう片方も失礼します」
と言ってから、もう片方のポケットも探ったわけだけども、何も無く、がっくりしてしまうと、田上さんは、
「無かったんだろ? なぁ!」
と自信満々の顔をした。
するとお兄ちゃんが、
「そのタオルハンカチの中も見せてください」
と言って、王茶先生は小首を傾げながら、
「タオルハンカチに中なんてないんだわね」
でも田上さんは明らかに不快そうな顔をしてから、
「このタオルハンカチは触ろうとするな! 俺! 潔癖症だから!」
お兄ちゃんは冷静に、
「そのタオルハンカチ、さすがに”もこもこし過ぎています”よね。多分、キャベツの葉のように何重構造になっているんでしょう。タオルハンカチなら多少もこもこしていても怪しく無いですからね。その何重構造にもなってポケット状になっている隙間にアクリルキーホルダーを入れているんじゃないんですか?」
すると田上さんが急に走り出したところで、王茶先生が田上さんの足に飛びつき、そのままアマレスのようにローリングした。
「うわぁぁああ! 顔が! アゴが!」
それでもローリングをやめない王茶先生。左右にローリングしまくりながら、
「タオルハンカチ見せなさーい!」
と叫ぶ。王茶先生、器用だな。ローリングしながら(悲鳴以外の言葉を)喋れるんだ。
「もうダメ! 俺が! 俺が犯人だぁ!」
と史上初、ローリングされながら自白した田上さん。
タオルハンカチを王茶先生が奪ってガサゴソすると、
「おちゃまー! ポケット構造になってるー!」
と言いながら、中からアクリルキーホルダーを取り出した。
そのタオルハンカチをみんなで見ると、マジックテープを互い違いに貼り付けていて、一部分だけがもっこりしないように細工されていた。
王茶先生は何だか自信満々に、
「おちゃまっ、プチヴェールのようにヴェールに包まれていたけども、この盗みはチーム一丸といった感じで結球はしていない、ってところわねっ」
と言ったわけだけども、ちょっと意味が分からなかったので僕は普通にスルーして、
「犯人捕まったね、お兄ちゃん」
お兄ちゃんは強く頷いてから、
「そもそもタオルハンカチを見せながら『ポケットはこれだけ!』と言う動作がおかしかったんです。堂々としようとし過ぎていて。自分を晒し過ぎていて」
それに対して王茶先生が、
「水に晒し過ぎると、栄養という未来の可能性が落ちるということわね! 葉物野菜は!」
と言ったわけだけども、それも普通にスルーしてこの事件は幕を下りた。
ちなみに泥棒を捕まえたことは普通にバレーボールクラブ側からも感謝され、バレーボールクラブ側からちゃんとした報酬金をもらった。
郁恵さんと丑三さんは探偵を呼んだという行動力が認められて、二軍の練習に加わるようになったらしい。そこで郁恵さんはすぐに頭角を現し、一軍昇格したという話だ。やっぱりこんな一軍から四軍まであると、正しく才能を発掘出来るかどうかの問題があるよね、と少し思った。でもまあ郁恵さんは大きなクラブにいて正解だったってことかぁ。いろいろ兼ね合いが難しいなぁ、世の中って。
(一旦、了)
(基本的に一話完結で続いていき、オチは王茶高校に通えるようになる、しかないので一旦終了とさせて頂きます)


