最弱探偵
【24 泥棒は日常茶飯事(3)】
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・【24 泥棒は日常茶飯事(3)】
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郁恵さんは話を続ける。
「ボールチェーンが切れると、小さいボールが飛び散るじゃないですか。その音がした時、大体田上がいるんです」
お兄ちゃんは郁恵さんの目を見ながら、
「バレーボールクラブ内は声や音でうるさいですが、ボールチェーンのボールが飛び散った音とか分かるものなんですか」
郁恵さんは目を見られてちょっとビックリしたのか、視線を逸らしながら、
「分かる時は分かります」
と言った。
これはもしかするとお兄ちゃんは、むしろこの郁恵さんや丑三さんのことを怪しんでいるのかもしれない。だからってその郁恵さんが僕ら探偵を呼ぶ整合性はまるで無いけども。
するとお兄ちゃんがポケットから何かを取り出した。
「これ、郁恵さんが盗まれたアクリルキーホルダーと同一のモノですよね」
郁恵さんが目を輝かせながら、
「それです! えっ! 取り返してくれたんですか!」
お兄ちゃんは即座に、
「同じモノを買ってきたんです。王茶先生が隣県まで行って」
王茶先生が得意げな顔をしている。
お兄ちゃんはそれを王茶先生が背負っているリュックに付けて、
「これでおとり捜査をしましょう。このアクリルキーホルダーは限定品ですよね。メルカリで売ればお金になるモノですよね」
「そ、そです……」
と少し悲しそうな顔をした郁恵さん。まあ一瞬取り返してもらったと思ってぬか喜びしたわけだからなぁ。
すると王茶先生が、
「二つ買ってきたから、とりあえず一つあげるんだわねっ」
と言って、その今まさにリュックに取り付けたアクリルキーホルダーじゃない、もう一つのアクリルキーホルダーをポケットから出して郁恵さんに渡した。
郁恵さんはすごく嬉しそうに、
「有難うございます!」
と言ったわけだけども、これが狙いという可能性もあるような気がしてきた。
仮に郁恵さんや丑三さんが犯人なら、こうやってアクリルキーホルダーをもらうことが狙いで。盗まれたという悲劇の話をすれば、善意で買ってきてくれるかもとか予想していて。事前にそんな感じのメッセージのやり取りも実はあったのかもしれない。で、そのあてがしっかり当たって。
あとは今日、もう泥棒という事件を起こさなければいいだけだ。盗まれた、と(僕の予想では)嘘の供述をしているアクリルキーホルダーと、今もらったアクリルキーホルダー合わせて二つ持っているから、それこそ片方は売れるし。そもそも今日このまま何も起きなければ、おとりのアクリルキーホルダーももらえるかもしれない。
確かにさっき目の前で泥棒が起きたけども、泥棒犯が一組とは限らないわけだし。郁恵・丑三ペアという泥棒と、また別に泥棒がいて、とか。いや郁恵・丑三ペアは泥棒じゃないけども、こうやって探偵を呼び出したことにより、善意でアクリルキーホルダーをもらえる可能性に賭けた、とか。多分依頼金とかも少ないだろうし、善意のアクリルキーホルダーに賭けていた可能性は十分ある。
そうだ、考えているといろんなことが浮かぶ。郁恵・丑三ペアは泥棒じゃない可能性もあるんだ。とは言え、お兄ちゃんは郁恵・丑三ペアのことを何かちょっと疑っているような気もしたんだけども。もしかすると郁恵・丑三ペアは(僕の予想では)嘘の供述をしているというわけだから詐欺師的、ということ?
とりあえずいろんな可能性があるから、郁恵さんと丑三さんの言動も要チェックだなと思ったところで、お兄ちゃんが郁恵さんへ、
「郁恵さんのプロファイリング的には、田上さんって泥棒することを楽しんでいる感じですか?」
郁恵さんはうんと頷いて、
「そんな感じがします。だからもしかしたら戦利品として、思い出として盗んだモノを家に残している可能性もあると思っているんです。希望的観測ですが」
お兄ちゃんは王茶先生のほうを見ながら、
「やっぱり、リュックを背負っているのは王茶先生のままが良さそうですね。そういう人なら、さっき声掛けしたのに無視されてしまった人から盗みたいはずです。そうじゃない場合はあの時、一番影が薄かった龍に背負ってもらおうと思っていましたが」
すると王茶先生は恥ずかしそうに、
「おちゃま……そのことを掘り返さないで……」
と俯いて呟いた。
お兄ちゃんは少し申し訳無さそうな顔をしながら、
「いや、まあそういうことなんですけども、王茶先生に背負ってもらうことが最適解ではあるんです。全然盗むトリックとか関係無く、普通に現行犯で捕まえることも出来る可能性が一番高いですし。龍も運動神経が良いので、僕よりは龍という話で」
僕も王茶先生も少しほっこりとした顔をした。自尊心は守られたから。僕は僕で影が薄かったかぁ、と少し思っていたから。
お兄ちゃんは強く頷いてから、
「とにかくっ、泥棒は現行犯逮捕が基本なので、ちょっとでも違和感を抱いたら王茶先生はためらわず、ソイツだと思うヤツを投げ飛ばしてください」
「おちゃまー! 分かったわー!」
「というわけで、僕と龍は王茶先生の後ろを少し離れて歩きしょう。郁恵さんと丑三さんは遠目から見ていてください。近くにいると警戒されて、盗まないかもしれなので」
郁恵さんはすぐに「分かりました!」と言ったんだけども、丑三さんは何だか嫌そうで。でも郁恵さんが袖を引っ張って遠く行ってくれた。
とは言え、この郁恵・丑三ペアもまだ怪しいので、そちらを見つつだなぁ、とは思った。
・【24 泥棒は日常茶飯事(3)】
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郁恵さんは話を続ける。
「ボールチェーンが切れると、小さいボールが飛び散るじゃないですか。その音がした時、大体田上がいるんです」
お兄ちゃんは郁恵さんの目を見ながら、
「バレーボールクラブ内は声や音でうるさいですが、ボールチェーンのボールが飛び散った音とか分かるものなんですか」
郁恵さんは目を見られてちょっとビックリしたのか、視線を逸らしながら、
「分かる時は分かります」
と言った。
これはもしかするとお兄ちゃんは、むしろこの郁恵さんや丑三さんのことを怪しんでいるのかもしれない。だからってその郁恵さんが僕ら探偵を呼ぶ整合性はまるで無いけども。
するとお兄ちゃんがポケットから何かを取り出した。
「これ、郁恵さんが盗まれたアクリルキーホルダーと同一のモノですよね」
郁恵さんが目を輝かせながら、
「それです! えっ! 取り返してくれたんですか!」
お兄ちゃんは即座に、
「同じモノを買ってきたんです。王茶先生が隣県まで行って」
王茶先生が得意げな顔をしている。
お兄ちゃんはそれを王茶先生が背負っているリュックに付けて、
「これでおとり捜査をしましょう。このアクリルキーホルダーは限定品ですよね。メルカリで売ればお金になるモノですよね」
「そ、そです……」
と少し悲しそうな顔をした郁恵さん。まあ一瞬取り返してもらったと思ってぬか喜びしたわけだからなぁ。
すると王茶先生が、
「二つ買ってきたから、とりあえず一つあげるんだわねっ」
と言って、その今まさにリュックに取り付けたアクリルキーホルダーじゃない、もう一つのアクリルキーホルダーをポケットから出して郁恵さんに渡した。
郁恵さんはすごく嬉しそうに、
「有難うございます!」
と言ったわけだけども、これが狙いという可能性もあるような気がしてきた。
仮に郁恵さんや丑三さんが犯人なら、こうやってアクリルキーホルダーをもらうことが狙いで。盗まれたという悲劇の話をすれば、善意で買ってきてくれるかもとか予想していて。事前にそんな感じのメッセージのやり取りも実はあったのかもしれない。で、そのあてがしっかり当たって。
あとは今日、もう泥棒という事件を起こさなければいいだけだ。盗まれた、と(僕の予想では)嘘の供述をしているアクリルキーホルダーと、今もらったアクリルキーホルダー合わせて二つ持っているから、それこそ片方は売れるし。そもそも今日このまま何も起きなければ、おとりのアクリルキーホルダーももらえるかもしれない。
確かにさっき目の前で泥棒が起きたけども、泥棒犯が一組とは限らないわけだし。郁恵・丑三ペアという泥棒と、また別に泥棒がいて、とか。いや郁恵・丑三ペアは泥棒じゃないけども、こうやって探偵を呼び出したことにより、善意でアクリルキーホルダーをもらえる可能性に賭けた、とか。多分依頼金とかも少ないだろうし、善意のアクリルキーホルダーに賭けていた可能性は十分ある。
そうだ、考えているといろんなことが浮かぶ。郁恵・丑三ペアは泥棒じゃない可能性もあるんだ。とは言え、お兄ちゃんは郁恵・丑三ペアのことを何かちょっと疑っているような気もしたんだけども。もしかすると郁恵・丑三ペアは(僕の予想では)嘘の供述をしているというわけだから詐欺師的、ということ?
とりあえずいろんな可能性があるから、郁恵さんと丑三さんの言動も要チェックだなと思ったところで、お兄ちゃんが郁恵さんへ、
「郁恵さんのプロファイリング的には、田上さんって泥棒することを楽しんでいる感じですか?」
郁恵さんはうんと頷いて、
「そんな感じがします。だからもしかしたら戦利品として、思い出として盗んだモノを家に残している可能性もあると思っているんです。希望的観測ですが」
お兄ちゃんは王茶先生のほうを見ながら、
「やっぱり、リュックを背負っているのは王茶先生のままが良さそうですね。そういう人なら、さっき声掛けしたのに無視されてしまった人から盗みたいはずです。そうじゃない場合はあの時、一番影が薄かった龍に背負ってもらおうと思っていましたが」
すると王茶先生は恥ずかしそうに、
「おちゃま……そのことを掘り返さないで……」
と俯いて呟いた。
お兄ちゃんは少し申し訳無さそうな顔をしながら、
「いや、まあそういうことなんですけども、王茶先生に背負ってもらうことが最適解ではあるんです。全然盗むトリックとか関係無く、普通に現行犯で捕まえることも出来る可能性が一番高いですし。龍も運動神経が良いので、僕よりは龍という話で」
僕も王茶先生も少しほっこりとした顔をした。自尊心は守られたから。僕は僕で影が薄かったかぁ、と少し思っていたから。
お兄ちゃんは強く頷いてから、
「とにかくっ、泥棒は現行犯逮捕が基本なので、ちょっとでも違和感を抱いたら王茶先生はためらわず、ソイツだと思うヤツを投げ飛ばしてください」
「おちゃまー! 分かったわー!」
「というわけで、僕と龍は王茶先生の後ろを少し離れて歩きしょう。郁恵さんと丑三さんは遠目から見ていてください。近くにいると警戒されて、盗まないかもしれなので」
郁恵さんはすぐに「分かりました!」と言ったんだけども、丑三さんは何だか嫌そうで。でも郁恵さんが袖を引っ張って遠く行ってくれた。
とは言え、この郁恵・丑三ペアもまだ怪しいので、そちらを見つつだなぁ、とは思った。