天才料理少女は、恋のレシピを知らない
「話せば長くなるんだけど、いいかな?」

「私は忙しいので、手短にお願いします」



莉子ちゃんのハキハキ・サバサバした対応を前にしても、久保田先輩のにこやかな笑顔は一切崩れない。

すごい人だな。



「莉子ちゃん、おもしろいね。じゃあ、要点だけ。この駅の南口に古い商店街があるのは知ってる?」

「いいえ、私の最寄り駅は2駅先なので」

「帰り道に途中下車させてごめんね。その商店街が、8月に取り壊されることが決まって、8月1日に最後のイベントがあるんだ」



それと私になんの関係があるのか、さっぱりわからない。

シェイクを吸い込みながら次の言葉を待った。



「今は閉店してるんだけど、その商店街の中に祖母がやっていた喫茶店があってね。その店を、8月1日のイベントで復活させたいと思ってて。そこで、杏ちゃんの力を借りたいんだ」

「なんでまた、杏に」



冷や汗が出た。

莉子ちゃんは、あのSNSのことを知らないし、知られたくない。

どうしようと思っていると、目の前に座る律くんが、スマホを持つ。

やめて。

目でうったえる。
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