天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
指差してくれた箇所には、ケチャップで描いたかわいいハート。

そんなリカバリー術まで習得してるって、すごいな。



「見た目はどうにかなったけど、味が全然だめだった。べちゃっとしてて」

「チャーハンみたいにパラっとさせると、うまく卵の中に入ってくれないし、かといって水分が多いと食感が悪いよね」

「杏みたいに、おいしく作れるようになるには、まだ時間がかかりそう」

「……負けないように、がんばる」



見た目はともかくとして、味で負けるのはプライドが許さない。

気づいたら、今まで通り話せるようになっていた。

元々、言葉数が多いタイプではない律くんに、気をつかわせてしまったのかもしれない。

優しいな。

会場は駅から近かったので、迷わずにたどり着くことができた。

空いている席に座ると、律くんはバッグの中から、修明中学の保護者証を取り出して首からぶら下げる。

それから、三脚とビデオカメラのセッティングを始めた。



「父さんに押しつけられた」
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