天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
会場の外に出ると、すっかり夕方だ。



「兄ちゃん、撤収作業とかミーティングがあるから、すぐに帰れないと思う。どうする?」

「ここで待ってたら邪魔かな?」

「何時に終わるかわからないから。……うちで待つ?」



お言葉に甘えることにした。

今日は久保田家には誰もおらず、お互い無言で春くんが帰ってくるのをリビングで待つ。



「帰ってきた」



門扉(もんぴ)が立てたかすかな音を、律くんが拾う。

二人で急いで玄関に向かった。



「ただいまー」



ジャージ姿の春くんは、いつも通りの顔。



「おかえりなさい」

「杏ちゃん……」



びっくりして固まっている春くんを放って、律くんはさっさとリビングに戻る。



「ごめんね、せっかく来てくれたのに。いいところを見せられなくて、かっこ悪いな俺」
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