天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
下に春くんの手が来て、上に律くんの手が来る。

腕をつかまれたことはあるけど、手のひらをくっつけたことはなかったから、ちょっと緊張した。

千晶さんが、なかなか撮ってくれないし。



「『明日です』って投稿した」



しばらくスマホを操作していた春くんが言う。



「いよいよだね」



店内を見回す。

埃ひとつなく、どこもぴかぴかだ。

千晶さんが買ってきてくれた小さな黒板に、「喫茶マリー」という文字とマリーゴールドの絵を律くんが書いた。

春くんがパソコンで作ったおしゃれなメニュー表も飾った。

明日の朝、店内をマリーゴールドで埋め尽くす。



「杏ちゃん、ありがとう」

「杏がいなかったら、明日は迎えられなかった」



しんみりと言われて、ちょっと涙が出そうになる。



「まだ終わってないよ。……でも、誘ってくれて、ありがとう。ものすごく楽しかった。それに、マリーのことがなかったら、一生盛り付けとか気にしなかっただろうなって思う」



最初のオムライスのことを思い出したのか、二人は苦笑いをする。



「おいしければ、見た目なんて関係ないっていう考えは、これからは捨てる。……多分」
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