天才料理少女は、恋のレシピを知らない
第1章 天才料理少女は、逃げ出したい

01知らない男の子たち

「ちょっといいかな?」

いつものように、学校の最寄り駅である青葉駅の改札を通ろうとしたとき。

見知らぬ男の子に声をかけられた。
その横にも、もう一人男の子がいる。

二人とも、私が通う清和(せいわ)女子学院中学の近くにある男子校、修明(しゅうめい)中学の制服を着ている。

赤いネクタイが印象的な頭のいい学校。

声をかけてきた子の顔をじっと見る。
栗色の髪で、華やかな顔をしている。私より、かなり背が高い。

雰囲気も落ち着いているし、明らかに年上だ。

中学生になってから、お父さんや学校の先生以外の男の人とほとんど話していないから、怖い。

肩にかけていた通学バッグを胸の前に抱えて、いつでも走り出せるように準備をした。

「これ、あなただよね?」

私の前にスマホの画面を向けてきたのは、栗色の髪の男の子の横に立っていた黒い髪の男の子。

私より少し背が低い。
制服がぶかぶかだから、新一年生かな?

凛(りん)とした顔立ちだけど、栗色の髪の子とどことなく似ている。
兄弟?

「あ……」
遅れてスマホの画面を見て固まった。

「……人違いですっ」
猛ダッシュで逃げた。

ホームに下りると、運よく電車が来たので、そのまま乗り込む。

助かった。

動き出した電車の中で、肩で息をしながら、気持ちを落ち着ける。

でも、心臓はずっとバクバクと音を立てていた。

なんで、私ってわかったの? 怖すぎる!

お母さんが、自分のSNSに、私が料理をしている動画をたびたびアップしていた。

でも、顔は一切写っていない。

しかも、最後に投稿したのは5年も前。

「もう二度と会いませんように」

地下鉄の暗い車窓を眺めながら、ぶるっと体を震わせた。

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