天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
後ろで大きい声がしたから振り返ると、律くんと目が合った。

でも、すぐにそらされる。

そのやり取りを見て、久保田先輩がクスクスと笑う。



「気が向いたら、新しい動画を律にも見せてあげて」

「はあ」



おばあちゃんが喜んでくれるのはわかる。

でも、なんで律くんは、そんなものが見たいんだろう?

ハンバーガー屋さんがあった駅の北口は、たくさんお店もあって栄えていた。

大きな図書館もあるから、私もよく行く。

でも、さびれたイメージのある南口には、来たことがなかった。

見慣れない道を歩いていくと、古びた商店街にたどり着いた。

くすんだ白いアーケードに、色の抜けた造花が天井にところどころ飾ってある。

街灯は点いているけど、お店はすべてシャッターが下りている。

まったくかかわりのない私ですら、寂しいって思ってしまう。

その中をまっすぐつき進むと、「喫茶マリー」と窓ガラスに書かれたお店の前で、久保田先輩の足が止まった。

茶色いレンガ調のタイルが貼られた外壁。

昭和レトロっていうのかな。

ちょっとかわいい。

お店の前には、プランターが4つ置いてある。

中をのぞき込むと、双葉が芽吹いている。



「マリーゴールド、植えてる」
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