天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
男の子に触れられるなんて、中学生になって初めてだ。

固まって、ひーってなってると、久保田先輩がやって来た。



「杏ちゃん、どうして」



言い訳を頭の中で必死に考える。

図書館を理由にしようかと思ったけど、駅の反対側だ。



「……もう一度、お店を見てみたくて。私にできるのかなって」



あきらめて、正直に話した。



「できるよ!」



私の腕をつかんだままの律くんが言う。

手を離してもらいたくて、困った顔をしていると、それに気づいた久保田先輩がほどいてくれた。



「決めるのは、杏ちゃんだ」

「…………自信が、ないです」



料理は好きだ。

でも、人にお金をもらえるような料理を作れるのかって思うと怖い。

それなのに、どうして私ははっきりと断れないんだろう。



「一人では……無理です」



気づいたら、私の口は勝手に話し始めていた。



「杏ちゃんが動きやすいように、俺たちはいくらでも動くよ」

「お願いします」



二人に、また頭を下げられた。

私は、息を大きく吸い込んで、気持ちを決めた。



「……やってみます。よろしくお願いします」



おばあちゃんに喜んでもらうために始めた料理。

それを、別の人に喜んでもらうためにするのもいいのかもしれない。
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