天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
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引き受けると決めた数十分後、私は後悔することになる……。

久保田先輩は、駅の北口側にある家まで喫茶マリーの鍵を取りに走る。

律くんは、プランターに水やりをする。

水やりなんて、一瞬で終わるものだから、久保田先輩が帰ってくるまで、律くんと気まずい時間をすごした。

そして、いよいよ喫茶マリーの中へ。



「…………」



埃(ほこり)臭い……。

扉を開けた瞬間、くしゃみが出そう。

閉店したのは2年前って言ってたっけ。



「久しぶりに中に入ったな」

「兄ちゃんが、寂しくなるって言うから」

「仕方ないだろ。おっ、この椅子懐かしい。俺の場所」

「俺の落書き残ってる」

「ばあちゃんに、めっちゃ怒られて、田中のおじいちゃんに取りなしてもらったやつな」



二人は、一切とまどうことなく、店に入り、中を歩いている。

私は、玄関口で立ち尽くしたままだ。

見える。

埃が積もっている床が。

テーブルや棚の上は言うまでもない。



「杏ちゃんも、入って」

「なにしてんの?」



この状態で、料理なんて無理。



「掃除ー!」



私の叫び声が、古い商店街に響いた。
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