天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
下手くそだから盛り付けを勉強しろ、じゃないんだ。

私の苦手なことを、そのまま引き受けてくれるなんて、律くん、いい子だな。

いや、ものすごくかっこいいかも。



「ありがとう。……でも、なんで呼び捨て?」



さっき「杏」って言われたよね。



「なんとなく。……年上って感じしないから」

「なにそれ! もしかして、千晶さんの呼び方を変えたみたいに、何か冷めた?」



あんなに昔の動画を見てくれていたけど、現実を知って幻滅(げんめつ)したとか?



「……そうじゃないし。今日から杏って呼ぶから」

「俺も杏って呼ぼうかなあ。でも、『春くん』『杏ちゃん』って呼び合ってる方がかわいいよね」



久保田兄弟が、何を言っているのか意味がよくわからない。

でも、この日から私は、久保田先輩のことを「春くん」と呼び始め、律くんは名前すら呼んだことのなかった私のことを「杏」と呼ぶようになった。
< 48 / 104 >

この作品をシェア

pagetop