天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
幕間 特別な女の子(side 春斗)

01小さな太陽が消える日

「また見てるの?」



喫茶マリーで、何度となく弟にかけた言葉。

律はいつも、俺たちと同年代の子が料理をする動画を見ていた。

学校が終わると、いつもばあちゃんの店に行く。

その後は、両親のどちらかが迎えに来てくれたり、近くにあるばあちゃんの家に泊まったり。

学童が苦手だった俺には、ありがたい場所だった。

常連さんたちと話して、勉強を教えてもらう毎日。

元気で明るいばあちゃんは、マリーゴールドみたい。



「商店街の取り壊しが決まったから」



3学期の終業式の直後、珍しく家族四人がそろった夕食で母さんが言った。



「そっか」



ばあちゃんが老人ホームに入ったとき以上の寂しさが込み上げてきた。

胸の中にあった小さい太陽が消えた気がした。



「ずっと置いといてよ」



律がすぐに言い返した。



「おばあちゃんには、もうお店は無理よ。それに、うちが取り壊しにオッケーを出さないと、商店街の他の人たちが困っちゃう」



ちゃんと自分の思いを口にできる弟がうらやましい。

毎日のように店の前に行っては、喫茶マリーの姿を目に焼きつけた。
どうやったら、一生覚えていられるんだろう?
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