天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
『違う、こうじゃない』



ばあちゃん、ブチ切れ案件。

でも、そこで「二度と作らない」とならないのが、喫茶マリーの店主。

律のだめ出しに、手を変え品を変え、ありとあらゆるオムライスで挑んできた。



『今度こそは、どうだ』



そう言って笑っていた、ばあちゃんの顔がよみがえる。

……たしかに、いい思い出だな。



「いいねえ、オムライス。じゃあ、律が担当で」

「俺、作れないよ」

「まじか。じゃあ、春斗」

「俺も無理」



千晶ちゃんが料理を作れないのは、みんなわかってるから、誰も何も言わない。

三人で、キッチンにいる両親を見た。

包丁とまな板を洗うのが面倒くさいからと、ハサミで食材を切っている。

たまに「食洗機をまわすのも面倒」とか言って、紙皿でご飯が出てくることもある我が家。

これは……頼るのは無理だな。



「サンドイッチとか、もっと簡単なやつで考えようか」



俺の提案に、律は納得6割・不満4割って顔をした。

それから、弟の入学式を終えて、新生活が始まった頃。



「兄ちゃん! 見つけた。マリーを助けてくれる子を」



あの料理動画の子が、近くの清和女子学院の生徒だったらしい。



「親指の付け根近くの黒子と茶色い痣、間違いない」



我が弟ながら、ちょっと気持ち悪い。

動画を見すぎだろ。

少し引いた。

でもすぐに、律に心の中で「ごめん」って謝ることになる。
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