天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
ぎゃーぎゃー言い合っていると、律くんが急に話を変えた。



「とりあえず、ここから出る」

「あっ、うん。お皿、引き取ろうか?」

「いい。ちょっと離れて」



言われた通りに、律くんのスマホを持ったまま、床下収納の穴から少し距離を取る。

律くんが、古びた白い箱が6つ、床の上に押し上げた。

そして、両手をぱんぱんと叩いて埃を落とすと、腕の力で這い上がってきた。

そんなにあっさりと登れるんだ。

男の子ってすごいな。



「すごい埃まみれになってるよ」

「まじか……」



慌てて手を洗う律くんの背中やズボンに付いている埃を、手のひらでぽんぽんと叩いてあげた。



「鼻、かゆくなってない?」

「多分、大丈夫」



振り返った顔には、少し黒いものが付いていた。

律くんにスマホを返し、ポケットの中に入れていたハンカチを取り出して、水で濡らす。



「じっとしてて」



自分と同じ高さにある顔を拭いた。



「杏、こっち見て」
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