天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
「えっ……」



向かいに座る律くんの手から、オレンジ色のペンがテーブルに転がる音がした。



「律くんも好きだよ。二人とも、誘ってくれてありがとう」



声をかけてもらえなかったら、マリーの一日復活にかかわることも、こうして二人と仲良くなることもなかった。



「もっとがんばろ」

「よし、兄ちゃんと互角」



なんか二人とも、ぶつぶつと独り言を言っている。

すると、春くんが、急に私に向き直る。



「夏休み入ってすぐに、水泳部の地区大会があるんだけど、応援に来てもらえたらうれしいな」

「私みたいな部外者が行ってもいいの?」

「杏ちゃんは部外者じゃないよ。家族みたいなもんだし。だめかな? 来てもらえたら、ものすごくがんばれる」

「行く!」



運動は好きじゃないけど、春くんがしているのを応援するのは楽しそうだ。



「……俺も行く」

「今まで一度も来たことないのに?」

「今年は行く。杏、一緒に応援席から見ような」

「俺のイベントをダシにしないでくれる?」



急に兄弟ゲンカが始まった。
< 93 / 122 >

この作品をシェア

pagetop