幸せの苦痛
1章「人が好きな僕」

1話「誰かと笑って居たかった」

僕は、人と一緒にいることが好きだった。
一人でいる時間が嫌いなわけじゃない。ゲームをしたり、好きな音楽を聴いたり、自分の世界に入り込んだりする時間だって好きだった。
それでも、誰かと笑い合える時間には、それとは違う特別な温かさがあった。
くだらない話で盛り上がったり、何でもないことで笑ったり、帰り道に「また明日」と言い合ったり。
そんな当たり前のことが、僕にとっては何よりも大切だった。
「悠真って、ほんと人といるの好きだよな」
小学校の頃、友達の佐伯陸にそう言われたことがある。
「そうかな?」
「そうだよ。休み時間になると絶対誰かのところ行ってるじゃん」
「だって、みんなと話すの楽しいし」
そう答えると、陸は笑った。
そのときの僕は、人との繋がりがいつまでも続くものだと思っていた。
今日一緒に笑った友達とは、明日も笑える。
今日仲良くなった人とは、明日もっと仲良くなれる。
そんなふうに、疑いもしなかった。
もちろん、友達と喧嘩をしたことだってある。
自分の言葉で相手を怒らせたことも、何気なく言った一言で空気を悪くしたこともあった。
それでも、謝れば仲直りできる。時間が経てば、また元に戻れる。
当時の僕は、そう信じていた。
人と仲良くなることは簡単じゃない。
そんなこと、本当は分かっていたはずなのに。
僕はまだ、人との関係が壊れる痛みを知らなかった。
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