歳をとっただけの俺に愛が産まれた七日間
Day Two ep.4
荷物を置き、買ってきた物を寝室で出しているとエルザが目を覚ました
「ハロルド……おはよう」
「おはようエルザ、具合はどうだい?」
「凄くいいみたい、嘘みたいに調子がいいの」
そう言ってエルザは立ち上がろうとしたがやはりふらついた
俺は慌ててエルザの肩を掴んで支えた
「無理しちゃ駄目だって」
そこでエルザは驚いたような顔をして自分が寝ていたベッドを見た
「あれ……」
俺もつられてその視線の先を見る
ベッドには大きな赤茶色いシミが広がっていた
エルザが自分の服を見下ろす、寝間着のズボンも赤茶色に染まっていた
「なに……? これ……」
俺はそれが何かすぐにわかった
ここまでの量ではないが戦場でも似た経験があった
俺はベッドに手をかざした、治療の時と同じ青白い光が広がる
そしてすぐに確信した
「大丈夫だよエルザ。 これは俺が、今までに殺した悪い物さ」
「え?」
「悪い物を殺すと、身体が自然に外に出すんだよ。 治療が終われば、そういうことはなくなる。 大丈夫、シーツも着替えも買ってきたから」
エルザは俺が広げた品々の一つに目を向けた
「だから、生理用品を買ってきたの?」
俺は一瞬言葉に詰まった、これはリサにすすめられて買ったものだ
でも、今の状況では凄く役に立つ、たまたまだろうけど、丁度良かった
「ああ、あれば便利だろ? シーツだって替えなくてすむかもしれない」
エルザは信じられないようにベッドのシミを見ていた
「私って……本当に助かる……の?」
「そう言っただろ。 実は仲のいい定食店の子からスープを貰ってきたんだ。 俺のより絶対美味しいから、エルザも食べられそうかい?」
するとエルザは心配そうな顔を俺に向けた
「ハロルド……ひどい顔……」
「え? そ、そうかな?」
「うん、凄く疲れた顔してるよ。 無理しないで」
「だ、大丈夫だよ。 俺っておじさんだからさ、髭を剃ってないとこんなもんなんだ。 それより、早く一緒に食べよう。 まずはシーツを替えるね。 エルザも着替えて」
「う、うん」
俺はエルザをソファーへ移し着替えを横に置いた
「あの……ハロルド?」
「ん?」
「それも……取ってもらってもいい?」
エルザが指差したのは生理用品だった
「あ、ああ、ごめん」
着替えるエルザを見ないようにしながら、俺はベッドのシーツを交換する
買っておいて良かった、まだ予備もある
洗濯をする余裕はとてもじゃないがない
シーツの交換が終わり、エルザは俺が買ってきた服に着替えた
リサが勧めた服は着やすくて、エルザも簡単に着替えられたようだ
それから俺はリサから貰ったスープを二つの皿にわけてパンの籠を腕に掛けて寝室に戻る
エルザにスープの皿を渡してスプーンを持たせる
俺も横の椅子に座り、スープの皿を膝に載せた
「ねえ、ハロルド」
「ん?」
「食事をする前にお祈りをしてもいい?」
「ああ、もちろん」
エルザは手を合わせて目を閉じた、俺も手を合わせる
「優しい天使様、今日も美味しいお食事をありがとうございます。 私達のような他の人達にも、どうぞお与えください、いただきます」
優しい……天使様?
同じようなお祈りはよく聞く文言ではあった
でも……普通は優しい神様と言う
エルザは祈りが終わるとスプーンでスープをすくって口に入れた
俺も同じように口に入れる、口いっぱいにスープのうまみが広がった
疲れていた身体が生まれ変わるような、何かがいきわたるような感じがした
「エルザ、美味しいね。 俺のスープとはえらい違いだ」
「うん、凄く美味しい。 でも私は、ハロのスープも同じぐらいに好きだよ」
「え?」
あの不味いスープが?
エルザなりに気を使ってくれたのかもしれないと思った
スープを飲むと、また力が湧いてくるような気がした
これなら、まだまだ魔法を使える
食事を終えると、エルザは掃除をすると言い出した
顔色は良くなったが、まだ立つのも危うい
俺が強く言って寝かせ、治療を再開すると、すぐに小さな寝息が聞こえ始めた
窓から差す光がゆっくりと傾いて
彼女の呼吸を確かめながら、俺は魔法を使い続けた
やがて外が暗くなった頃、昼に感じていた重さが、俺の身体に戻ってきた
頭も少しぼんやりしている、自分の集中が途切れたことに気づいた
「今日は……ここまでか……」
俺は魔法を止めた、本当は少しでも続けたい
それで結果が変わることもあるかもしれないから
だが、今の状態で無理をしてもなんにもならない
エルザの顔をのぞき込む、まだ変わらず発疹は残っていた
それでも昨夜とは違い、息は静かに穏やかに続いている気がした
俺に期待して、安心してくれているのかもしれない
少なくとも俺を信じて、身を任せてくれている
大丈夫だ、俺ならできる
地べたでもがくように毎日を生きてきた
若い頃の俺よりも、今の俺の方が、この治療は上手くできる
ずっと、ずっと、目的もなくやってきたじゃないか
やっと……目的が出来たんだ、できなきゃ……嘘だ
『頑張ってきたんだね』
エルザが言ってくれた言葉が、頭に浮かぶ
俺は眠っている彼女を見つめた
頑張ってきた
そんな風に、自分のことを考えたことはなかった
ただ、ほかにすることがなかっただけだ
やめたら、何をして夜を過ごせばいいのか分からなかった
だから、毎日続けていただけ
それでも、エルザは頑張ったと言ってくれた
そんな言葉一つで嬉しくなっている
俺は両手で顔をこすった、まだ、何も終わっていない
食事をさせて、少し話せるようになっただけだ
情けないな……
俺はもう一度、エルザを見た
せめて、君に言ってもらった言葉くらいは、嘘にしたくない
お願いだ……神様
俺に、この子を助けさせてくれ
俺はそっとエルザの頭を撫でた
「ごめんな……でも、また明日、続きをやるから。 絶対に、俺が助けてみせるから」
俺はエルザの毛布を掛け直し、椅子から立ち上がった
それから寝室にあるソファーに腰を下ろすと、そのまま身体が倒れ込んだ
置いてあった毛布を引き寄せるのが精いっぱいだった
俺は泥のように眠りに落ちた
「ハロルド……おはよう」
「おはようエルザ、具合はどうだい?」
「凄くいいみたい、嘘みたいに調子がいいの」
そう言ってエルザは立ち上がろうとしたがやはりふらついた
俺は慌ててエルザの肩を掴んで支えた
「無理しちゃ駄目だって」
そこでエルザは驚いたような顔をして自分が寝ていたベッドを見た
「あれ……」
俺もつられてその視線の先を見る
ベッドには大きな赤茶色いシミが広がっていた
エルザが自分の服を見下ろす、寝間着のズボンも赤茶色に染まっていた
「なに……? これ……」
俺はそれが何かすぐにわかった
ここまでの量ではないが戦場でも似た経験があった
俺はベッドに手をかざした、治療の時と同じ青白い光が広がる
そしてすぐに確信した
「大丈夫だよエルザ。 これは俺が、今までに殺した悪い物さ」
「え?」
「悪い物を殺すと、身体が自然に外に出すんだよ。 治療が終われば、そういうことはなくなる。 大丈夫、シーツも着替えも買ってきたから」
エルザは俺が広げた品々の一つに目を向けた
「だから、生理用品を買ってきたの?」
俺は一瞬言葉に詰まった、これはリサにすすめられて買ったものだ
でも、今の状況では凄く役に立つ、たまたまだろうけど、丁度良かった
「ああ、あれば便利だろ? シーツだって替えなくてすむかもしれない」
エルザは信じられないようにベッドのシミを見ていた
「私って……本当に助かる……の?」
「そう言っただろ。 実は仲のいい定食店の子からスープを貰ってきたんだ。 俺のより絶対美味しいから、エルザも食べられそうかい?」
するとエルザは心配そうな顔を俺に向けた
「ハロルド……ひどい顔……」
「え? そ、そうかな?」
「うん、凄く疲れた顔してるよ。 無理しないで」
「だ、大丈夫だよ。 俺っておじさんだからさ、髭を剃ってないとこんなもんなんだ。 それより、早く一緒に食べよう。 まずはシーツを替えるね。 エルザも着替えて」
「う、うん」
俺はエルザをソファーへ移し着替えを横に置いた
「あの……ハロルド?」
「ん?」
「それも……取ってもらってもいい?」
エルザが指差したのは生理用品だった
「あ、ああ、ごめん」
着替えるエルザを見ないようにしながら、俺はベッドのシーツを交換する
買っておいて良かった、まだ予備もある
洗濯をする余裕はとてもじゃないがない
シーツの交換が終わり、エルザは俺が買ってきた服に着替えた
リサが勧めた服は着やすくて、エルザも簡単に着替えられたようだ
それから俺はリサから貰ったスープを二つの皿にわけてパンの籠を腕に掛けて寝室に戻る
エルザにスープの皿を渡してスプーンを持たせる
俺も横の椅子に座り、スープの皿を膝に載せた
「ねえ、ハロルド」
「ん?」
「食事をする前にお祈りをしてもいい?」
「ああ、もちろん」
エルザは手を合わせて目を閉じた、俺も手を合わせる
「優しい天使様、今日も美味しいお食事をありがとうございます。 私達のような他の人達にも、どうぞお与えください、いただきます」
優しい……天使様?
同じようなお祈りはよく聞く文言ではあった
でも……普通は優しい神様と言う
エルザは祈りが終わるとスプーンでスープをすくって口に入れた
俺も同じように口に入れる、口いっぱいにスープのうまみが広がった
疲れていた身体が生まれ変わるような、何かがいきわたるような感じがした
「エルザ、美味しいね。 俺のスープとはえらい違いだ」
「うん、凄く美味しい。 でも私は、ハロのスープも同じぐらいに好きだよ」
「え?」
あの不味いスープが?
エルザなりに気を使ってくれたのかもしれないと思った
スープを飲むと、また力が湧いてくるような気がした
これなら、まだまだ魔法を使える
食事を終えると、エルザは掃除をすると言い出した
顔色は良くなったが、まだ立つのも危うい
俺が強く言って寝かせ、治療を再開すると、すぐに小さな寝息が聞こえ始めた
窓から差す光がゆっくりと傾いて
彼女の呼吸を確かめながら、俺は魔法を使い続けた
やがて外が暗くなった頃、昼に感じていた重さが、俺の身体に戻ってきた
頭も少しぼんやりしている、自分の集中が途切れたことに気づいた
「今日は……ここまでか……」
俺は魔法を止めた、本当は少しでも続けたい
それで結果が変わることもあるかもしれないから
だが、今の状態で無理をしてもなんにもならない
エルザの顔をのぞき込む、まだ変わらず発疹は残っていた
それでも昨夜とは違い、息は静かに穏やかに続いている気がした
俺に期待して、安心してくれているのかもしれない
少なくとも俺を信じて、身を任せてくれている
大丈夫だ、俺ならできる
地べたでもがくように毎日を生きてきた
若い頃の俺よりも、今の俺の方が、この治療は上手くできる
ずっと、ずっと、目的もなくやってきたじゃないか
やっと……目的が出来たんだ、できなきゃ……嘘だ
『頑張ってきたんだね』
エルザが言ってくれた言葉が、頭に浮かぶ
俺は眠っている彼女を見つめた
頑張ってきた
そんな風に、自分のことを考えたことはなかった
ただ、ほかにすることがなかっただけだ
やめたら、何をして夜を過ごせばいいのか分からなかった
だから、毎日続けていただけ
それでも、エルザは頑張ったと言ってくれた
そんな言葉一つで嬉しくなっている
俺は両手で顔をこすった、まだ、何も終わっていない
食事をさせて、少し話せるようになっただけだ
情けないな……
俺はもう一度、エルザを見た
せめて、君に言ってもらった言葉くらいは、嘘にしたくない
お願いだ……神様
俺に、この子を助けさせてくれ
俺はそっとエルザの頭を撫でた
「ごめんな……でも、また明日、続きをやるから。 絶対に、俺が助けてみせるから」
俺はエルザの毛布を掛け直し、椅子から立ち上がった
それから寝室にあるソファーに腰を下ろすと、そのまま身体が倒れ込んだ
置いてあった毛布を引き寄せるのが精いっぱいだった
俺は泥のように眠りに落ちた

