「氷の天才外科医の激甘な課題添削」 冷徹な外科部長は難攻不落の愛し君だけに甘く狂う
2章 削られていく理性

chapterーー1

帝都総合病院の心臓血管外科において、「氷の外科医」桐生蒼真副医局長が放つ空気感の変化に真っ先に気づいたのは、他でもない同僚の医師や看護師たちだった。

これまでの桐生といえば、一切の無駄を削ぎ落とした氷柱のような男だった。

感情の起伏を見せず、淡々と完璧なオペをこなし、下で働く研修医や看護師がミスを犯せば、眉1つ動かさずに冷徹な事実だけを指摘して切り捨てる。

その冷徹なまでの合理性と圧倒的な手技の精度ゆえに、誰もが敬意と恐れを抱いていた。

​だが、ここ数週間の桐生の様子は、どこか違っていた。

​「……なぁ、桐生先生、最近なんか焦ってないか?」

「焦っているというか、なんというか……浮いてる?」

「あの桐生先生が?  バカ言うなよ。昨日も難関の弓部大動脈全置換術を予定時間の半分で完璧に終わらせただろ」

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