色褪せて、着色して。Ⅸ~クレマチス編~
 王家の領地近くにある村は全部で3つ。
 私が住むA村、B村。そしてC村。
 村民に若い女性はほとんどいない。
 それは、前王妃が若い女性を排除したからだという・・・(悪魔で噂だけど)

 秘密の館では、カスミ様以外。
 女性はいないはずだ。
 女の子みたいな顔立ちだなとは、思ったけど。
 女の子なはずないと思い込んでいた。
 だが、バニラはすぐに見破った。
「マヒル姫、本当に申し訳ありませんでした」
 ユキ様は90度近く身体を折り曲げて、謝罪をしてくれた。
 ロープで束縛されたポポと呼ばれる子は、どこかに連れていかれた。

 エントランスにあるロビーに招かれ。
 私はソファーに座った。
 すぐにお茶が運ばれる。
 ピアノのレッスンを受ける際は、このロビーで行われるのだが。
 いつも夜なので、なんだか違和感を感じる。
 私の背後にはバニラが立っている。
「さすがに、男か女か判別するのに裸にさせるわけにもいきませんで…」
 いつも冷静で堂々としているユキ様が小さくなっているのを見ると。
 なんだか気分が良い。
「言い訳は結構ですわ」
 後ろでぴしゃりとバニラが言い切った。
「我があるじは唾を吐かれたのですよ?」
「バニラ、大丈夫だから」
 まだ、怒りがおさまらないのか。
 バニラは真っ赤な目でユキ様を睨みつける。
 ユキ様は座った状態で「申し訳ありません」と頭を下げた。
「あの、ポポという子は娼婦館に連れて行けって言っていたんですけど。どういうことですか?」
 出された紅茶を一口飲んだが。
 冷めてしまっていた。
 これなら、バニラの淹れてくれた紅茶のほうが10倍美味しい。

「あいつがあんなことを…」
 よわよわしい声でユキ様が言う。
「推測するに、ポポというガキ…ごほん。失礼。ポポさんの知り合いが娼婦館で働いているようですわね」
 ずばっとバニラが言い切ると。
 ユキ様は両手で頭をおさえた。
「まさか…あいつがそこまでするとは」
「えーと。事情は測りかねますが、どうにか出来ないんですかね?」
 よくわからずに言うと。
 ぎろりと冷たい目でユキ様が私を見る。
「出来るわけありません。C村の娼婦館は…」
「村に娼婦館があるんですか?」
 初耳だった。
「マヒル姫は知る必用はありません」
 ユキ様は立ち上がったが、ぐらっと身体がふらついた。
「改めて、謝罪に行きます。今日は申し訳ございませんが…」
 と言って、ユキ様は早く帰ってくれとばかりに玄関のほうを見つめた。
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