優しい死神さんと、空気じゃない私
「この辺の方かしら?」

「はい。すぐ近くにある大きな神社……あそこから来ました」

 会話の間に生まれた静寂の中、彼は老婦人の顔をじっと見つめ、なぜ自分が見えるのかを悟るのだった。

(そうか。彼女には……もう、最期の時が近づいているんだ)

 この世の生き物は、なんて寿命が短いのだろう――心に静かな悲しみが押し寄せてくる。
 何百年も生き続け、死ぬことのない彼にとって、人間の命はあまりにも儚いものに思えた。

(僕たちが巡り合ったのは、そういうことか)

 この出会いが何を意味するのかを理解すると、彼女に向ける彼の微笑みは、少し寂しげな偽りのものへと変わっていたのだった。

 そんな心の色を感じ取ったかのように、老婦人は、温かい言葉を投げかけた。

「学生さんかしら?」

「えっ、いえっ。えーと……社会人です」

「背が高くてイケメンだから、さぞモテるでしょう」

「いえ、そんな」

 ふと、道端に立つカーブミラーが視界に入ると、 そこには目の前の老婦人や、すれ違う通行人の姿が映っているのに、自分自身の姿だけが存在していない。

 それを見て、青年は密かに心を曇らせる。

(一体僕は……どんな姿をしているんだろう?)
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