冷徹社長はトラウマ秘書を愛で包む
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紀沙の勤め先は、都内に居を構える御堂製鉄株式会社の本社だ。国内有数の経営グループである御堂ホールディングスの傘下で、御堂の鉄がなければ国は立ち行かないと称されるほど。その本社ビルの最上階、役員フロアに併設された秘書エリアに入り、紀沙は明るく挨拶した。
「おはようございます」
「おはよう、楠さん。今日も元気ね~」
向かいの席に座った年嵩の先輩が、欠伸まじりに挨拶を返す。紀沙はますますにっこり笑った。スマホを底に収めたバッグを、デスク下の棚にしまう。
プライベートで何があろうと、社会人としては表に見せない。
新卒で秘書室に配属されてから四年、今日まで紀沙が守り続けている矜恃だ。
「まだ御堂社長って出社されてないですよね?」
紀沙の担当役員は、御堂暁という。創業家である御堂一族の御曹司ながら、二十五歳のときに実力で御堂製鉄の社長に抜擢されたやり手だ。
手鏡を取り出した先輩が、瞼のむくみをチェックしながらぱちんと片目を瞑る。
「まだよぉ。社長が来てるんだったら私、もっとちゃんとメイクしてるわ」
「ふふ、先輩は今でもお綺麗ですよ。それでは私は先に社長室に行っています」
秘書エリアから出る間際、ドアに吊るされた小さな鏡に映った自分の顔を横目に見た。
特別美人でもなく、二目と見られない醜さでもない、平凡な面差し。白い肌に淡いピンク系のチークを差して血色もよく見える。くっきりとした二重瞼のせいで白目が目立つけれど、充血もしていない。よし。
紀沙の勤め先は、都内に居を構える御堂製鉄株式会社の本社だ。国内有数の経営グループである御堂ホールディングスの傘下で、御堂の鉄がなければ国は立ち行かないと称されるほど。その本社ビルの最上階、役員フロアに併設された秘書エリアに入り、紀沙は明るく挨拶した。
「おはようございます」
「おはよう、楠さん。今日も元気ね~」
向かいの席に座った年嵩の先輩が、欠伸まじりに挨拶を返す。紀沙はますますにっこり笑った。スマホを底に収めたバッグを、デスク下の棚にしまう。
プライベートで何があろうと、社会人としては表に見せない。
新卒で秘書室に配属されてから四年、今日まで紀沙が守り続けている矜恃だ。
「まだ御堂社長って出社されてないですよね?」
紀沙の担当役員は、御堂暁という。創業家である御堂一族の御曹司ながら、二十五歳のときに実力で御堂製鉄の社長に抜擢されたやり手だ。
手鏡を取り出した先輩が、瞼のむくみをチェックしながらぱちんと片目を瞑る。
「まだよぉ。社長が来てるんだったら私、もっとちゃんとメイクしてるわ」
「ふふ、先輩は今でもお綺麗ですよ。それでは私は先に社長室に行っています」
秘書エリアから出る間際、ドアに吊るされた小さな鏡に映った自分の顔を横目に見た。
特別美人でもなく、二目と見られない醜さでもない、平凡な面差し。白い肌に淡いピンク系のチークを差して血色もよく見える。くっきりとした二重瞼のせいで白目が目立つけれど、充血もしていない。よし。