冷徹社長はトラウマ秘書を愛で包む
 愛おしげに細められた瞳に、ぎゅうっと胸が痛くなる。今まで美しい男から与えられたことのない、甘くて切ない痛みだった。

「ご、ご家族の写真はないんですか?」

 頬に集まってくる熱をごまかすように口早に訊ねる。とたん、暁がふっと顔をそらした。

「あるが、見せたくない」
「どうしてですか?」

 断られるとは思ってもみなくてきょとんとする。何か気に障ることをしただろうか。

 暁はもう片方の手で行儀悪く頬杖をつき、庭の方に目をやった。

「……紀沙が、兄の方がいいと言ったら、困る」
「そんなわけないですよ!?」
「嫌だと言ったら嫌だ」

 頑なに断る暁の、黒髪の隙間から覗く耳の先が赤くなっている。それを目の当たりにすると言葉が上手く出てこなくなって、紀沙はしぶしぶ引き下がった。

(でも、御堂家ならネットに写真はあるよね?)

 あとで調べてみよう、と紀沙は誓った。
< 31 / 52 >

この作品をシェア

pagetop