冷徹社長はトラウマ秘書を愛で包む
3.思惑うごめく船上
*
ガラは、クルーズ船が湾内を一周する間に行われる趣向だった。
街の人々が浮かれる華金の夜。ドレスアップした紀沙は、船内の様子に目を丸くしていた。
「わあっ、この船は御堂造船が作ったんですよね」
「ああ。御堂製鉄も鉄鋼の調達で関与している。富裕層向けの新シリーズということで、今夜はお披露目も兼ねているらしい」
三層吹き抜けのアトリウムは船内とは思えないほど広々としており、多くの招待客たちが楽しげに行き交っている。けれど床に敷かれた緋色の絨毯が足音を吸い取り、賑やかさは控えめだ。
ガラの会場であるホールへ続く大階段を見上げ、紀沙はそわそわと自分の身だしなみを確認した。
「ところで暁さんからいただいたドレス、アトリエで見たときより豪華になっていませんか……!?」
「俺が追加で依頼した。綺麗だから問題ないだろう」
隣に立つ暁がさらりと応じる。今夜の彼は黒の三つ揃いで長躯を包み、艶やかな髪をきちんと整えていた。秀でた額に落ちかかる前髪が、計算され尽くした色気を醸しだしている。
「追加で、って……!」
とはいえ紀沙は予想以上に飾り立てられた己の姿を受け入れるのにいっぱいいっぱいだった。袖には銀糸で繊細な刺繍が施され、むき出しだったデコルテ部分には透けるような総レースが追加されている。さらには一粒ダイヤのネックレスが用意され、首元で一番星のように輝いていた。
人のよさそうな店主の顔が蘇る。今度絶対にお礼を言おう。いつ会えるのかわからないけれど……。
遠く離れたアトリエに感謝を捧げていると、暁の瞳が思案深げに向けられた。
「……いや、やはり問題あるな」
「ど、どうしました。私のマナーがなっていませんか」
ガラは、クルーズ船が湾内を一周する間に行われる趣向だった。
街の人々が浮かれる華金の夜。ドレスアップした紀沙は、船内の様子に目を丸くしていた。
「わあっ、この船は御堂造船が作ったんですよね」
「ああ。御堂製鉄も鉄鋼の調達で関与している。富裕層向けの新シリーズということで、今夜はお披露目も兼ねているらしい」
三層吹き抜けのアトリウムは船内とは思えないほど広々としており、多くの招待客たちが楽しげに行き交っている。けれど床に敷かれた緋色の絨毯が足音を吸い取り、賑やかさは控えめだ。
ガラの会場であるホールへ続く大階段を見上げ、紀沙はそわそわと自分の身だしなみを確認した。
「ところで暁さんからいただいたドレス、アトリエで見たときより豪華になっていませんか……!?」
「俺が追加で依頼した。綺麗だから問題ないだろう」
隣に立つ暁がさらりと応じる。今夜の彼は黒の三つ揃いで長躯を包み、艶やかな髪をきちんと整えていた。秀でた額に落ちかかる前髪が、計算され尽くした色気を醸しだしている。
「追加で、って……!」
とはいえ紀沙は予想以上に飾り立てられた己の姿を受け入れるのにいっぱいいっぱいだった。袖には銀糸で繊細な刺繍が施され、むき出しだったデコルテ部分には透けるような総レースが追加されている。さらには一粒ダイヤのネックレスが用意され、首元で一番星のように輝いていた。
人のよさそうな店主の顔が蘇る。今度絶対にお礼を言おう。いつ会えるのかわからないけれど……。
遠く離れたアトリエに感謝を捧げていると、暁の瞳が思案深げに向けられた。
「……いや、やはり問題あるな」
「ど、どうしました。私のマナーがなっていませんか」