冷徹社長はトラウマ秘書を愛で包む
よく磨かれた革靴が、毛足の詰まった絨毯にささやかな足音を立てる。
「おはよう、楠」
窓からあふれる朝日を一心に注がれるのは、世にも美しい男だった。黒々とした切れ長の瞳に、形のよい薄い唇。髪は綺麗に櫛が通され、上質なスーツ姿には隙がない。背も高く、広い部屋が急に余白を失ってしまったように見える。端正な顔にはたいていの場合愛想というものが存在せず、まだ三十歳だと聞いたが、対峙する相手を萎縮させる威圧感を全身から放っている。
しかし紀沙は慣れたもので、ポットを磨いていた布を戸棚にしまい、コーヒーマシンをセットした。
「おはようございます、御堂社長」
ついで秘書用のタブレットを手にし、デスクに座った御堂の前に立つ。
「本日のご予定ですが……」
入社してすぐ、御堂の専任秘書となって早四年経つ。新卒が社長秘書を務めるのは異例中の異例で、もちろん最初は秘書室の先輩方が担当していたのだが、仕事に厳しく無愛想な御堂にみんな音を上げてしまった。そこで抜擢されたのが新人の紀沙。ダメ元だったが、紀沙は上手くこなした。よくあの御堂社長についていけるわね、と先輩方には言われるが、別に理不尽な要求をされるわけでもなく、やりやすいトップだ、と思う。仕事上の相性がよいのだろう。
毎朝のルーティン通りに予定を説明していると、机に両肘をついた御堂が、じっ……とこちらを見つめていた。
「おはよう、楠」
窓からあふれる朝日を一心に注がれるのは、世にも美しい男だった。黒々とした切れ長の瞳に、形のよい薄い唇。髪は綺麗に櫛が通され、上質なスーツ姿には隙がない。背も高く、広い部屋が急に余白を失ってしまったように見える。端正な顔にはたいていの場合愛想というものが存在せず、まだ三十歳だと聞いたが、対峙する相手を萎縮させる威圧感を全身から放っている。
しかし紀沙は慣れたもので、ポットを磨いていた布を戸棚にしまい、コーヒーマシンをセットした。
「おはようございます、御堂社長」
ついで秘書用のタブレットを手にし、デスクに座った御堂の前に立つ。
「本日のご予定ですが……」
入社してすぐ、御堂の専任秘書となって早四年経つ。新卒が社長秘書を務めるのは異例中の異例で、もちろん最初は秘書室の先輩方が担当していたのだが、仕事に厳しく無愛想な御堂にみんな音を上げてしまった。そこで抜擢されたのが新人の紀沙。ダメ元だったが、紀沙は上手くこなした。よくあの御堂社長についていけるわね、と先輩方には言われるが、別に理不尽な要求をされるわけでもなく、やりやすいトップだ、と思う。仕事上の相性がよいのだろう。
毎朝のルーティン通りに予定を説明していると、机に両肘をついた御堂が、じっ……とこちらを見つめていた。