『Sign』—君との約束はいつまでも色褪せないから

一瞬の間を置いてから、葵は小さく息を吐いた。


「……はいはい。わかりましたよ」

そう言って、くるりと背を向ける。
 

「やったー!」

 
私は弾むような足取りで地面に置いた荷物を手に取り、自転車のカゴの中へ入れた。


そして、ガチャンとスタンドを蹴り上げ、堤防へ続く坂道を登っていく。



堤防沿いに咲く花の甘い香りと、穏やかに吹きつける春の風が、私たちの肌を優しく撫でていった。
 

私はサドルに腰を下ろすと、先に走り出した葵に向かって「ちょっと、待ってよー!」と呼びかけた。



無視をする葵に、私は少しだけ眉根を寄せる。


「ねぇ! 葵、速いってばー!」
 
「そう? これでもゆっくり漕いでいるつもりだけど」
 
「嘘だー!」
 

軽やかに走っていく葵の後ろを追うように、私は足全体でペダルを踏み込んだ。
 

結局追いつくことができず、私は「はぁ、はぁ」と息を切らし始める。


それに気づいた葵は、徐々にペースを落とし、私の隣にそっと並んだ。



葵は優しいんだか、冷たいんだか。


出会ったときからよくわからない奴だ。周囲からも「葵君ってミステリアスな雰囲気があるよね」と言われるくらいだ。
 
 
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