神獣の花嫁・掌篇〜秘めた想い〜

秘めた想い

あ、コイツやっぱ阿呆だわ、と、私は生暖かい笑みを浮かべた。

「──だからさ、オレはこのままずっと、彼女への想いを秘めて生きて行くんだろうなって思ったワケよ。な、泣けるだろ?」

いや、泣けんわ、普通。
そんなクソしょーもない厨二話。

前世で自分は犬の獣人で、仕えてた女主人(あるじ)への想いを秘めたまま生涯を終えたとかって、どこの三流小説の設定なのさ。
どうせなら、もっと説得力のあるキャラクターにすればいいのに。

と思ったけど、コッチも昨日、半年付き合った(ような気がする)オトコに振られたばっかだし。

「分かる! 泣けるよね〜、報われない片思いぃ~」

って、適当に話合わせて何度目か分からない乾杯をした。
……やば、私もかなり、酔いが回ってきたかも。

つけっぱなしのテレビから民放のキャスターが「午後10時を回りました。今夜はこのニュースから」とか言ってる。

ローテーブルに散らかったビール缶とサラミと裂けるチーズと柿の種。
あ、柿の種、ピーナッツばっか食いやがったな、この男。

「で? えーと、二階のKANONにお勤めの矢城(やしろ)さん。ナニちゃんだっけ?」

勤め先のショッピングモールのテナント懇親会。
二次会のカラオケはダルいから帰るつもりでタクシー呼んだら阿呆男(オマケ)が付いてきた。

「逢里(あいり)だよ」

「そうそう、逢里チャン。……んー? アイリでいっか? ソッチの方がしっくりくるし」

「あはは、朗(あきら)くん、図々しい上に馴れ馴れしいなぁ。年上呼び捨てとか止めてくれる?」

「あー、じゃあ逢里チャンで」
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