E組の補習は、恋の予習。~赤点ガールは、先生の「特別」になりたい~

Ⅳ

期末テストの最終日。最後のチャイムが鳴り響いた瞬間、私は力なく机に突っ伏した。
すべてを出し切った。シャーペンを握りしめすぎて、右手の親指にはうっすらとタコができている。試験範囲の教科書はボロボロになり、自作のまとめノートは3冊目に突入していた。

「あー、終わった……! 社会マジで難しくなかった!?」
「記述問題とか意味わかんなくない?」

周囲のクラスメイトたちがどっと疲れを滲ませて盛り上がる中、私は静かに深呼吸をした。
手応えは……ある。これまでの人生で、間違いなく一番勉強したし、問題の隅々まで頭に入っている自信があった。



そして数日後、運命のテスト返却日。

「はい、社会科のテスト返却するよー。今回は全体的に難しかったけど……頑張った跡が見える答案も多かったね」

伊織先生がいつもの爽やかな笑顔で、クラスに答案用紙を配っていく。
自分の机の前に立つ足が、緊張でガクガクと震えていた。
美里ちゃんに負けたくない。何より、伊織先生に「頑張ったね」って、今度こそ満面の笑みで褒められたい。

「……内山さん」

自分の番が来て、先生から答案用紙が手渡される。
伏せられた用紙を、おそるおそる両手でめくった。

「――っ!」

そこにあったのは、赤のボールペンで鮮やかに、そして力強く書かれた――【100点】の文字だった。

「え……うっそ……!」

何度も、何度も目をこすって見直す。だけど、幻なんかじゃない。どこを見ても減点のない、まぎれもない満点だった。
いつも一桁の数字におびえて、赤点の補習から始まった私が、高校最後の期末テストで、社会の「100点」をとった。

「――すごいな、内山さん」

不意に、目の前から温かい声が降ってきた。
驚きと、それ以上に隠しきれないほどの誇らしげな笑みを浮かべて、先生は私を見つめていた。

「学年トップだけじゃない、君がこの点数をとるなんて……。すっごい努力したんだろ? 本当によく頑張ったね」

先生が、そっと私の頭に手を伸ばし、優しくポンポンと撫でてくれた。
大きな、温かい手のひらの温もりが、頭から全身へと一気に広がっていく。
心臓がうるさいほどにバクバクと鳴り響き、嬉しさと気恥ずかしさで、涙が出そうになった。

美里ちゃんじゃない。先生は今、私を見てくれている。私だけの努力を見て、笑ってくれている。
初めて自分という存在を、誰かに正面から認められた気がした。

先生の優しい笑顔を間近で見た瞬間、私の胸の奥で、今まで感じたことのないほど熱くて、甘い感情が激しくスパークした。

――これは、恋……なのだろうか?
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