あえかなる君へ 心からの愛を
深夜二時を過ぎると、オンラインショップにアクセスする人もめっきり減り、そろそろいいかと柊が立ち上がる。

「お疲れ。あとは何かあったら俺のスマホにアラート来るから、仮眠室で寝るか」
「うん、そうだね」

柊のあとについて同じフロアの仮眠室に行くと、大きな部屋にローテーブルを挟んでソファベッドが二台置かれていた。

「え、部屋はここだけなの?」
「隣にもうひと部屋あるけど、別の人が使ってる」
「じゃあ私はどこで寝ればいいの?」
「ここか、隣」
「はい? つまり、森住と一緒の部屋ってこと?」
「それか、隣の部屋の誰かと一緒。さてどっち?」

ふざけないでよ! と乙葉は憤る。

「てっきり個室だと思ってたのに」

すると柊はいつもの調子ではなく、神妙に頷いた。

「そうだよな、ごめん。同期のなれ合いですっかりないがしろにしてた。タクシー代払うから、堀井は帰れ」

乙葉も声のトーンを落とす。

「でも、森住は?」
「俺は仕事を任されてるから帰るわけにはいかない」
「それなら私だって……」
「堀井がいる必要はない。いいから帰れ。今、タクシー呼ぶ」

ポケットからスマートフォンを取り出して操作し始めた柊に、乙葉は少し考えてから顔を上げた。

「私も残る。ここでいいよ」
「え? いや……。だったら俺はオフィスで夜明かしする」
「だめだよ。徹夜して何かあった時に頭が働かなくなったら困るでしょ。それより、シャワールームはあるの?」
「ああ、こっち。ドアの向こうにミニキッチンがあって、その奥がシャワールームになってる」
「わかった。森住、ここから動かないでよね?」
「それは、もちろん」

まだ何か言いたそうな柊に背を向けて、乙葉はスタスタとドアに向かった。
< 12 / 66 >

この作品をシェア

pagetop