あえかなる君へ 心からの愛を
男前と不器用と
「森住、動画の編集終わった?」
その日の夜、乙葉は退社する前にDX本部のオフィスに顔を出し、柊に尋ねる。
「おお、さっき終わってあーみゃちゃんからOKの返事もらったところ。堀井、ひと通りチェックしてくれ」
「うん、わかった」
柊の隣に椅子を並べて、二人でパソコンのモニターに目をやる。
柊がマウスを操作して動画を再生させた。
『皆さーん、こんにちは』とあーみゃが明るく挨拶する。
「テロップとタイトルも可愛いね」
「そうか? よかった。俺のセンスじゃどうしようもなくて、若い女の子に訊いて作ったんだ」
若い女の子、と乙葉は苦笑いしながら呟く。
「森住、よくそう言うよね」
「ん? 若い女の子って?」
「そう。なんか自分は年老いたじいさんみたいだよ」
「いやもう、気分はそうだよ」
「やめてよ、二十五でじいさんなんて。私だって同い年なんだから」
「堀井は若い女の子でいいんじゃないか?」
「あ、そういうことね、おじいちゃん」
「そうじゃよ、乙葉ちゃんやー」
あはは! と乙葉は声を上げて笑う。
「ちょっと、肝心の動画チェックしそびれちゃった。もう一回あたまからお願い」
「はいはい、ちょっと待っておくれやー」
心なしかヨボヨボした手つきで柊が再びマウスをクリックした。
「なんかハンプティの赤いジャケット、こうして見るとすごくカメラ映りがいいよね」
「そうじゃのう。実物は派手な感じじゃったが、こうして見るとしっくりくる。赤井さんにも、よう似合うとるわい」
「おじいちゃん、関西人?」
「んだあ」
「それ違うから」
軽くあしらいながら、乙葉は真剣に動画を観る。
あーみゃは、明るく話のテンポもいいので、飽きることなく最後まで楽しめた。
「うん、いいね。編集もばっちりだと思う」
「さよかー、ほなアップしまっせ」
「おじいちゃん、手元しっかりね」
「任せときんしゃい」
柊が動画を公開すると、瞬く間に再生回数が増えていく。
と同時に、次々とコメントが書き込まれた。
【ハンプティの衣装、すっごーい!】
【あーみゃちゃんの手作り? 本格的!】
【二人並んでるのが可愛い】
そこから? と乙葉は柊と顔を見合わせる。
「なんか、赤井さんがすっかりよき相棒になってるね」
「そうだな。もはやあーみゃちゃん一人には戻れんぞ」
コメントは時間が経つにつれて動画の内容に合わせたものになる。
【トートバッグ、どっちもいいね! イロチ買いするー】
【チャームとキーホルダーも可愛い。やっぱりハンプティは外せないでしょ】
【ボタンに飾るなんて、おしゃれ! 真似しちゃおう】
【ハンプティのハンカチとフローティングボールペン、ぜひぜひ!】
【あーみゃちゃん、絶対作ってねー】
そんなコメントで溢れていた。
「今回も大反響ね」
「そうだな。第二弾のリリースはクリスマス前の二十日で決定。第三弾のグッズ製作の話も早めに上層部に上げないとな」
「うん。まだまだ忙しくなりそうだね」
「ああ」
しばらくしてから、柊が時計を見る。
「もう八時過ぎてるのか。堀井、メシでも食いに行くか?」
「いいけど、森住の仕事は?」
「今日はオンコールの日じゃないし、タスクも終わってる。たまにはこんな日もないとな」
「そっか。じゃあたまにはのんびり夕食楽しもうか」
「そうだな。ちょっと待ってろ、今片づけるから」
柊はパソコンをシャットダウンしてデスク周りを整えてから、カバンを手に立ち上がる。
「お待たせ。何食べたい?」
「なんかおじいちゃんとしゃべってたら和食が食べたくなっちゃった」
「そうかい、そうかい。ほな、美味しい料亭にでも行こか」
「行こ行こ」
二人で笑い合ってオフィスを出た。
その日の夜、乙葉は退社する前にDX本部のオフィスに顔を出し、柊に尋ねる。
「おお、さっき終わってあーみゃちゃんからOKの返事もらったところ。堀井、ひと通りチェックしてくれ」
「うん、わかった」
柊の隣に椅子を並べて、二人でパソコンのモニターに目をやる。
柊がマウスを操作して動画を再生させた。
『皆さーん、こんにちは』とあーみゃが明るく挨拶する。
「テロップとタイトルも可愛いね」
「そうか? よかった。俺のセンスじゃどうしようもなくて、若い女の子に訊いて作ったんだ」
若い女の子、と乙葉は苦笑いしながら呟く。
「森住、よくそう言うよね」
「ん? 若い女の子って?」
「そう。なんか自分は年老いたじいさんみたいだよ」
「いやもう、気分はそうだよ」
「やめてよ、二十五でじいさんなんて。私だって同い年なんだから」
「堀井は若い女の子でいいんじゃないか?」
「あ、そういうことね、おじいちゃん」
「そうじゃよ、乙葉ちゃんやー」
あはは! と乙葉は声を上げて笑う。
「ちょっと、肝心の動画チェックしそびれちゃった。もう一回あたまからお願い」
「はいはい、ちょっと待っておくれやー」
心なしかヨボヨボした手つきで柊が再びマウスをクリックした。
「なんかハンプティの赤いジャケット、こうして見るとすごくカメラ映りがいいよね」
「そうじゃのう。実物は派手な感じじゃったが、こうして見るとしっくりくる。赤井さんにも、よう似合うとるわい」
「おじいちゃん、関西人?」
「んだあ」
「それ違うから」
軽くあしらいながら、乙葉は真剣に動画を観る。
あーみゃは、明るく話のテンポもいいので、飽きることなく最後まで楽しめた。
「うん、いいね。編集もばっちりだと思う」
「さよかー、ほなアップしまっせ」
「おじいちゃん、手元しっかりね」
「任せときんしゃい」
柊が動画を公開すると、瞬く間に再生回数が増えていく。
と同時に、次々とコメントが書き込まれた。
【ハンプティの衣装、すっごーい!】
【あーみゃちゃんの手作り? 本格的!】
【二人並んでるのが可愛い】
そこから? と乙葉は柊と顔を見合わせる。
「なんか、赤井さんがすっかりよき相棒になってるね」
「そうだな。もはやあーみゃちゃん一人には戻れんぞ」
コメントは時間が経つにつれて動画の内容に合わせたものになる。
【トートバッグ、どっちもいいね! イロチ買いするー】
【チャームとキーホルダーも可愛い。やっぱりハンプティは外せないでしょ】
【ボタンに飾るなんて、おしゃれ! 真似しちゃおう】
【ハンプティのハンカチとフローティングボールペン、ぜひぜひ!】
【あーみゃちゃん、絶対作ってねー】
そんなコメントで溢れていた。
「今回も大反響ね」
「そうだな。第二弾のリリースはクリスマス前の二十日で決定。第三弾のグッズ製作の話も早めに上層部に上げないとな」
「うん。まだまだ忙しくなりそうだね」
「ああ」
しばらくしてから、柊が時計を見る。
「もう八時過ぎてるのか。堀井、メシでも食いに行くか?」
「いいけど、森住の仕事は?」
「今日はオンコールの日じゃないし、タスクも終わってる。たまにはこんな日もないとな」
「そっか。じゃあたまにはのんびり夕食楽しもうか」
「そうだな。ちょっと待ってろ、今片づけるから」
柊はパソコンをシャットダウンしてデスク周りを整えてから、カバンを手に立ち上がる。
「お待たせ。何食べたい?」
「なんかおじいちゃんとしゃべってたら和食が食べたくなっちゃった」
「そうかい、そうかい。ほな、美味しい料亭にでも行こか」
「行こ行こ」
二人で笑い合ってオフィスを出た。