あえかなる君へ 心からの愛を
グッズの第二弾リリースの日がやってきた。
前回と同じように、乙葉は定時になるとDX本部のオフィスに行き、柊と肩を並べて準備をする。
「堀井、今日はちゃんと仮眠室ふた部屋押さえてあるから。この前はごめんな」
柊はどうしても最初にそれを言いたかったらしい。
乙葉は「ううん、ありがとう」と笑顔で答えた。
「それにしても、あーみゃちゃんの生配信、賑わってるね」
「ああ。今回もリリースに合わせて宣伝してくれてる。ありがたいな」
「ほんと。ねえ、見て。リアルタイムでコメントが書き込まれてるんだけど、【今夜はハンプティいないの?】だって」
「ははっ、いたら俺たちおったまげるわ」
「だよね」
笑いながらあーみゃの配信を観ていると、あーみゃが『みんなハンプティのこと大好きだね。じゃあ、ちょっと待ってて』と言って何やらパソコンを操作し始めた。
ん? と思いつつ目を凝らしていると、画面がもう一つ現れる。
『お待たせ―、ハンプティ呼んだよー』
えっ! と乙葉と柊は驚いてモニターを凝視した。
そこには、背景をバーチャルにしてハンプティの衣装に身を包んだ赤井が映っている。
「うそ! 赤井さん?」
「ほんとだ。マジで?」
「残業申請したのかな?」
「どうだろ……ってそこじゃない! 赤井さん、どんだけあーみゃちゃんと仲良しなんだよ」
コメント欄には【ハンプティきたー!!】と喜びの声が続いた。
『みんな、もうすぐクリスマスだね。彼におねだりして、あーみゃとハンプティのグッズ買ってもらってねー』
あーみゃと一緒に赤井も笑顔で手を振っている。
【ハンプティのチャーム、買います!】
【わたしも! 3つ買っちゃおうかなー】
【第3弾のグッズも楽しみにしてまーす】
【ハンプティのフローティングボールペン、絶対ほしい!】
書き込まれるコメントを、乙葉と柊は半ば呆然と見つめた。
『じゃあ名残惜しいけど配信はそろそろ終わり。みんなのグッズ購入報告、待ってるねー』
あーみゃがそう言って動画配信を終えると、二人でハッと我に返った。
「いかん、意識が全部持って行かれるところだった」
「ほんと。気合い入れ直そう」
深呼吸してから二人で準備を進める。
前回よりもさらにアクセスが増えることを想定し、柊が全て事前に対処しておいたおかげで、今回も大きなトラブルなくリリースされた。
しばらくそのまま様子を見守る。
「何が一番売れるかなあ?」
「案外ハンプティ―のチャームだったりして」
「うん、ありえるよね」
リラックスしてそんなことを話していると、柊が思い出したように乙葉に尋ねた。
「堀井、クリスマスイブに君島さんのマンションに招待されてる?」
「うん、紗理奈さんから誘われて。え、もしかして森住も?」
「そう。俺は君島さんに誘われた。堀井、ほんとに行くのか? クリスマスイブだぞ?」
「それって、迷惑だから遠慮しろってこと?」
「違う。その……、若い女の子にとってクリスマスイブって、特別なんだろ?」
乙葉はポカンとしてから吹き出して笑う。
「出た、森住の『若い女の子』。ご心配なく、私にとっては普通の日だよ。いつもと変わらず部屋でゴロゴロ過ごすつもりだったから、誘ってもらってよかった」
「そうか、それならいいんだけど」
「途中でデパ地下に寄って、オードブルとか買って行くことになってるの。森住も一緒に選んでくれると助かる」
「ああ、わかった。じゃあどこかで待ち合わせしよう」
「うん」
そうこうしているうちに深夜二時になり、二人はパソコンの電源を落として仮眠室に移動した。
「堀井は前と同じこっちの部屋を使って。あ、待て。今ベッドメイキングする」
「ありがとう」
柊はソファのリクライニングをフルフラットにし、枕やシーツ、ブランケットをクローゼットから取り出してきれいに整えると、エアコンと照明も調節する。
「あとは大丈夫そうか?」
「うん、あの……」
「どうした?」
真剣に顔を覗き込まれて、乙葉は言い淀む。
「えっと、笑わないで聞いてほしいんだけど」
「大丈夫、笑わない。何?」
「その、私がシャワーを浴びて出て来るまで、ここにいてくれない?」
「え?」
柊は少し眉根を寄せてから、「ああ!」と笑みを浮かべた。
「わかった、おばけが怖いんだよな?」
「もう! 笑わないって約束したのに」
「笑ってないよ」
「笑ってる!」
「これはにこにこしてるだけだ」
「森住がにこにこするなんて、おかしいに決まってるでしょ!」
乙葉はツンと澄ましてシャワールームに向かう。
ドアを開けると最後に柊を振り返り、「待っててよ?」と念を押した。
前回と同じように、乙葉は定時になるとDX本部のオフィスに行き、柊と肩を並べて準備をする。
「堀井、今日はちゃんと仮眠室ふた部屋押さえてあるから。この前はごめんな」
柊はどうしても最初にそれを言いたかったらしい。
乙葉は「ううん、ありがとう」と笑顔で答えた。
「それにしても、あーみゃちゃんの生配信、賑わってるね」
「ああ。今回もリリースに合わせて宣伝してくれてる。ありがたいな」
「ほんと。ねえ、見て。リアルタイムでコメントが書き込まれてるんだけど、【今夜はハンプティいないの?】だって」
「ははっ、いたら俺たちおったまげるわ」
「だよね」
笑いながらあーみゃの配信を観ていると、あーみゃが『みんなハンプティのこと大好きだね。じゃあ、ちょっと待ってて』と言って何やらパソコンを操作し始めた。
ん? と思いつつ目を凝らしていると、画面がもう一つ現れる。
『お待たせ―、ハンプティ呼んだよー』
えっ! と乙葉と柊は驚いてモニターを凝視した。
そこには、背景をバーチャルにしてハンプティの衣装に身を包んだ赤井が映っている。
「うそ! 赤井さん?」
「ほんとだ。マジで?」
「残業申請したのかな?」
「どうだろ……ってそこじゃない! 赤井さん、どんだけあーみゃちゃんと仲良しなんだよ」
コメント欄には【ハンプティきたー!!】と喜びの声が続いた。
『みんな、もうすぐクリスマスだね。彼におねだりして、あーみゃとハンプティのグッズ買ってもらってねー』
あーみゃと一緒に赤井も笑顔で手を振っている。
【ハンプティのチャーム、買います!】
【わたしも! 3つ買っちゃおうかなー】
【第3弾のグッズも楽しみにしてまーす】
【ハンプティのフローティングボールペン、絶対ほしい!】
書き込まれるコメントを、乙葉と柊は半ば呆然と見つめた。
『じゃあ名残惜しいけど配信はそろそろ終わり。みんなのグッズ購入報告、待ってるねー』
あーみゃがそう言って動画配信を終えると、二人でハッと我に返った。
「いかん、意識が全部持って行かれるところだった」
「ほんと。気合い入れ直そう」
深呼吸してから二人で準備を進める。
前回よりもさらにアクセスが増えることを想定し、柊が全て事前に対処しておいたおかげで、今回も大きなトラブルなくリリースされた。
しばらくそのまま様子を見守る。
「何が一番売れるかなあ?」
「案外ハンプティ―のチャームだったりして」
「うん、ありえるよね」
リラックスしてそんなことを話していると、柊が思い出したように乙葉に尋ねた。
「堀井、クリスマスイブに君島さんのマンションに招待されてる?」
「うん、紗理奈さんから誘われて。え、もしかして森住も?」
「そう。俺は君島さんに誘われた。堀井、ほんとに行くのか? クリスマスイブだぞ?」
「それって、迷惑だから遠慮しろってこと?」
「違う。その……、若い女の子にとってクリスマスイブって、特別なんだろ?」
乙葉はポカンとしてから吹き出して笑う。
「出た、森住の『若い女の子』。ご心配なく、私にとっては普通の日だよ。いつもと変わらず部屋でゴロゴロ過ごすつもりだったから、誘ってもらってよかった」
「そうか、それならいいんだけど」
「途中でデパ地下に寄って、オードブルとか買って行くことになってるの。森住も一緒に選んでくれると助かる」
「ああ、わかった。じゃあどこかで待ち合わせしよう」
「うん」
そうこうしているうちに深夜二時になり、二人はパソコンの電源を落として仮眠室に移動した。
「堀井は前と同じこっちの部屋を使って。あ、待て。今ベッドメイキングする」
「ありがとう」
柊はソファのリクライニングをフルフラットにし、枕やシーツ、ブランケットをクローゼットから取り出してきれいに整えると、エアコンと照明も調節する。
「あとは大丈夫そうか?」
「うん、あの……」
「どうした?」
真剣に顔を覗き込まれて、乙葉は言い淀む。
「えっと、笑わないで聞いてほしいんだけど」
「大丈夫、笑わない。何?」
「その、私がシャワーを浴びて出て来るまで、ここにいてくれない?」
「え?」
柊は少し眉根を寄せてから、「ああ!」と笑みを浮かべた。
「わかった、おばけが怖いんだよな?」
「もう! 笑わないって約束したのに」
「笑ってないよ」
「笑ってる!」
「これはにこにこしてるだけだ」
「森住がにこにこするなんて、おかしいに決まってるでしょ!」
乙葉はツンと澄ましてシャワールームに向かう。
ドアを開けると最後に柊を振り返り、「待っててよ?」と念を押した。