あえかなる君へ 心からの愛を
駅に戻って山手線に乗り、紗理奈と君島のマンションの最寄駅で降りる。

「住宅街だから空いててホッとするね」
「そうだな」

そう言いつつ、柊は乙葉の手を握ったままだった。

「えっと、駅から徒歩五分のタワーマンションだって。あれかな?」
「ああ、多分そうだろう」

真新しくきれいなマンションを目指して歩くと、ふと乙葉が足を止める。

「どうした?」
「うん、お花屋さん」
「え?」

乙葉の視線の先を追うと、小さくて洒落たフラワーショップがあった。

「クリスマスの花束、きれいだね。紗理奈さんに買って行きたい」
「そうか」

乙葉は柊と繋いだ手を離し、少しかがんで熱心に花束を選び始める。

「リースもすてきだけど、もしかしたら紗理奈さんはもう飾ってあるかもしれないし……。そうするとテーブルに飾れる小さめのアレンジメントがいいかなあ?」

優しい笑みを浮かべて花を見つめる乙葉の横顔は、見惚れるほど清らかで美しい。

「これはどうかな? 赤と緑のクリスマスカラー」

振り返って尋ねられ、柊はドギマギしながら頷いた。

「うん、いいと思う」
「ほんと?」
「うん、多分」
「多分!? もう、何よそれ。でもまあ、男の人はお花にあんまり関心ないよね」
「ごめん」
「やだ、どうしたの? そんなことで謝らないでよ。今日の森住、なんか変なの」

ふふっと笑ってから、乙葉は「これください」とスタッフに声をかけていた。
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