あえかなる君へ 心からの愛を
三月二十五日、乙葉の誕生日。
その日は土曜日で、乙葉は柊と二人で紗理奈たちの結婚パーティーの最終打ち合わせに行くことになっていた。

朝、柊が乙葉のマンションまで車で迎えに来て、以前と同じショッピングモールの駐車場に停める。

「前回よりも空いてるね」
「そうだな。駒田さんとの打ち合わせは十一時だから、少しぶらぶらするか」
「うん。私ね、前に行ったあのお店にもう一度行きたい」
「言うと思った」
「でしょ?」

笑いながら以前プレゼントを交換し合ったお店に行く。

「いらっしゃいませ……あら、ひょっとしてクリスマスの?」

女性のスタッフが柊の顔を見て思い出したように尋ねた。

「はい、そうです。喜んでもらえました。あの時はありがとうございました」
「よかったです!」

乙葉は、「もしかして、こっそり買ってくれた時の?」と柊に声をかける。

「そう。堀井に見つからないようにラッピングや会計をしてくれたんだ」
「そうだったのね。私、全然気づかなかったよ」

乙葉が「あのタンブラー、とても気に入ってます。ありがとうございました」とスタッフにお礼を言うと「とんでもない」と笑顔で返された。

「本日もご来店くださって、ありがとうございます。また何かサプライズですか?」
「ふふ、そうです、と言いたいところですけど、それだとサプライズにならないので今日は自分の買いたいものを選びます。前回見かけたマスキングテープとか、思い出すとどうしてもほしくなってしまって」
「そうでしたか、嬉しいです。どうぞごゆっくりご覧ください」
「はい」

乙葉は目を輝かせながら、じっくりと選ぶ。

「この魔法事典みたいな表紙のノートと、星がちりばめられたマスキングテープと、夜空に月と星が輝くメモ帳とふせん、あとはボールペンも!」
「どれも文房具なんだな」
「うん。会社にいる時間が少しでも楽しくなるように」

すると柊は急に表情を暗くした。

「どうかした?」
「いや、なんでもない。他は?」
「うーんと、クリアファイルもいいなあ」
「よし、全部買ってやる」
「え? いいよ、自分で買うから」
「店員さん見てるだろ? かっこつけさせろ」
「あ、なるほど」

あとでお金を返そうと、乙葉はここでは柊に会計を頼んだ。

「ほらよ」
「ありがとう。わあ、きれいにラッピングしてくれてる」

乙葉はレジにいるスタッフに「ありがとうございました」とお礼を言ってから店をあとにした。
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