あえかなる君へ 心からの愛を
新郎新婦がお色直しの為に退場すると、乙葉はしばらく紗理奈とおしゃべりしてから紗彩を抱いて柊の元に戻って来た。
「はあい、紗彩ちゃんですよー。このピンクのワンピース、みんなでお祝いに贈ったものなの。よく似合ってて可愛いでしょー?」
ねー? と乙葉が首をかしげると、紗彩もキャッと声を上げて笑った。
「はあ、可愛い! もう抱いてるだけで癒やされる」
「堀井、すっかり親戚のおばちゃんだな」
「なんとでも言って。このエンジェルスマイルが見られるなら、近所のおばちゃんでも何でもいいわ。ねえ、紗彩ちゃん」
柊はそんな乙葉の表情に見惚れる。
まるで本当の母親のような優しい眼差しだった。
(いつか堀井もこんなふうに自分の子どもに優しく微笑むんだろうな)
想像しただけで胸がジンとした。
(堀井のこの先の人生、俺が隣にいられたらどんなにいいだろう。いつもそばで支え、この笑顔を守っていけたら。いや、願うだけじゃない。俺は必ずそうするんだ)
沸々とそんな想いが込み上げてきた。
その時、司会を務めている小森が「それでは装いも新たに新郎新婦のお二人が入場いたします。皆さま、後方の扉にご注目ください」とマイクで告げる。
「紗彩ちゃん、パパとママのところに戻ろうね」
そう言って乙葉が紗理奈たちのところに行き、柊は三脚で立てたカメラを扉に向けた。
すると予想とは全く違う、不穏な雰囲気のBGMが流れ始める。
照明も暗くなり、ダークな色合いのスポットライトが会場内を縦横無尽に照らした。
(なんだ?)
不思議に思いつつ、とにかくカメラを構えていると、やがて扉の隙間から次々とモンスターやゾンビ、吸血鬼などが乱入してきた。
キャー! という悲鳴が上がる中、誰かが突進してきて柊にガバッと抱きつく。
「森住、怖いよー」
やれやれ、と柊は苦笑いする。
「落ち着け、堀井。ハロウィンの仮装だよ」
「でもおばけだよ。おばけがたくさん……いやー! こっちに来る!」
乙葉はもう視線を上げられなくなり、柊の背中にぴたりとくっついて顔を伏せていた。
柊は左手を後ろに回してトントンと乙葉の背中をなでつつ、右手でカメラを操作する。
やがて音楽が一層盛り上がり、扉に明るいスポットライトが当たったかと思うと、アリスの水色の衣装を着たあーみゃとハンプティ・ダンプティに扮した赤井が腕を組んで現れた。
皆が一斉に「可愛い!」と言って拍手する。
「ほら、堀井。もう大丈夫だぞ」
小さく声をかけるが、乙葉はうつむいたまま首を振る。
「やだ。まだおばけいるでしょ?」
「いるけど、別に襲いかかって来ないぞ」
「でもだめなの。怖いものは怖いの」
「はいはい」
柊は、あとで乙葉が動画で観られるようにと、あーみゃと赤井の姿を撮影する。
二人はメインテーブルまで来ると、トランプの柄で飾られた大きなケーキの前に立ち、仲良くナイフを持つ手を重ねた。
「それではお二人による初めての愛の共同作業、ケーキ入刀です!」
小森が明るく言って場を盛り上げる。
あーみゃと赤井は見つめ合うと、ゆっくりケーキにナイフを入れた。
中から赤いイチゴがあふれ出て、皆が一斉に拍手する。
「ではそのままファーストバイトに移りましょう。はい、お二人向かい合って『アーン』で食べさせてください」
乙葉が柊のスーツを握りしめつつ、ちらりと背中から顔を覗かせた。
「わあ、可愛いケーキ。あーみゃちゃんも赤井さんもすてき」
笑顔を見せたものの、取り分けたケーキを仮装したゾンビたちがゲストに配り始めると、再び柊の背中に隠れた。
「堀井、ケーキいらないのか?」
「いる! けど、おばけはいらない」
「わかったよ。もらってくるから待ってろ」
「だめだめ! 離れて行かないで」
柊は何度目かの「やれやれ」を繰り返した。
「はあい、紗彩ちゃんですよー。このピンクのワンピース、みんなでお祝いに贈ったものなの。よく似合ってて可愛いでしょー?」
ねー? と乙葉が首をかしげると、紗彩もキャッと声を上げて笑った。
「はあ、可愛い! もう抱いてるだけで癒やされる」
「堀井、すっかり親戚のおばちゃんだな」
「なんとでも言って。このエンジェルスマイルが見られるなら、近所のおばちゃんでも何でもいいわ。ねえ、紗彩ちゃん」
柊はそんな乙葉の表情に見惚れる。
まるで本当の母親のような優しい眼差しだった。
(いつか堀井もこんなふうに自分の子どもに優しく微笑むんだろうな)
想像しただけで胸がジンとした。
(堀井のこの先の人生、俺が隣にいられたらどんなにいいだろう。いつもそばで支え、この笑顔を守っていけたら。いや、願うだけじゃない。俺は必ずそうするんだ)
沸々とそんな想いが込み上げてきた。
その時、司会を務めている小森が「それでは装いも新たに新郎新婦のお二人が入場いたします。皆さま、後方の扉にご注目ください」とマイクで告げる。
「紗彩ちゃん、パパとママのところに戻ろうね」
そう言って乙葉が紗理奈たちのところに行き、柊は三脚で立てたカメラを扉に向けた。
すると予想とは全く違う、不穏な雰囲気のBGMが流れ始める。
照明も暗くなり、ダークな色合いのスポットライトが会場内を縦横無尽に照らした。
(なんだ?)
不思議に思いつつ、とにかくカメラを構えていると、やがて扉の隙間から次々とモンスターやゾンビ、吸血鬼などが乱入してきた。
キャー! という悲鳴が上がる中、誰かが突進してきて柊にガバッと抱きつく。
「森住、怖いよー」
やれやれ、と柊は苦笑いする。
「落ち着け、堀井。ハロウィンの仮装だよ」
「でもおばけだよ。おばけがたくさん……いやー! こっちに来る!」
乙葉はもう視線を上げられなくなり、柊の背中にぴたりとくっついて顔を伏せていた。
柊は左手を後ろに回してトントンと乙葉の背中をなでつつ、右手でカメラを操作する。
やがて音楽が一層盛り上がり、扉に明るいスポットライトが当たったかと思うと、アリスの水色の衣装を着たあーみゃとハンプティ・ダンプティに扮した赤井が腕を組んで現れた。
皆が一斉に「可愛い!」と言って拍手する。
「ほら、堀井。もう大丈夫だぞ」
小さく声をかけるが、乙葉はうつむいたまま首を振る。
「やだ。まだおばけいるでしょ?」
「いるけど、別に襲いかかって来ないぞ」
「でもだめなの。怖いものは怖いの」
「はいはい」
柊は、あとで乙葉が動画で観られるようにと、あーみゃと赤井の姿を撮影する。
二人はメインテーブルまで来ると、トランプの柄で飾られた大きなケーキの前に立ち、仲良くナイフを持つ手を重ねた。
「それではお二人による初めての愛の共同作業、ケーキ入刀です!」
小森が明るく言って場を盛り上げる。
あーみゃと赤井は見つめ合うと、ゆっくりケーキにナイフを入れた。
中から赤いイチゴがあふれ出て、皆が一斉に拍手する。
「ではそのままファーストバイトに移りましょう。はい、お二人向かい合って『アーン』で食べさせてください」
乙葉が柊のスーツを握りしめつつ、ちらりと背中から顔を覗かせた。
「わあ、可愛いケーキ。あーみゃちゃんも赤井さんもすてき」
笑顔を見せたものの、取り分けたケーキを仮装したゾンビたちがゲストに配り始めると、再び柊の背中に隠れた。
「堀井、ケーキいらないのか?」
「いる! けど、おばけはいらない」
「わかったよ。もらってくるから待ってろ」
「だめだめ! 離れて行かないで」
柊は何度目かの「やれやれ」を繰り返した。