あえかなる君へ 心からの愛を
「それでは順番にご紹介しますね」
会議室の前方に紗理奈が立ち、集まったメンバーを見渡した。
「まず今回のコラボグッズをインフルエンサーとやり取りして企画してくださった、マーケティング部企画開発課の小森さん」
コの字に並んだ長テーブルの端に座っていた、華奢な女性が立ち上がる。
「初めまして、マーケの小森です。SNSや動画サイトで今一番若い女性に人気があるインフルエンサーのあーみゃさんと、色々相談しながらグッズを作らせていただきました。コスメやポーチ、アクセサリーなどから始めましたが、ゆくゆくはアパレル関係もという野望を抱いております。まずは第一弾のグッズを軌道に乗せることを目標にしています。どうぞよろしくお願いいたします」
自分より少し若く見える小森は、髪型もファッションも雑誌から抜け出したように華やかだと思いながら、乙葉は皆と一緒に拍手を送る。
(すごいなあ、もうしっかり自分の企画をモノにしてるって感じ。インフルエンサーと直接やり取りしてるっていうのが、既にすごいよね。着ているお洋服もオシャレだし。カーディガンの袖を通さないで肩に掛けただけって、よく落ちないよね)
そんな妙なことまで考えていると、紹介は同じ企画開発課の赤井に移る。
三十代の赤井は眼鏡をかけたちょっとふっくらした体型で、憎めない愛嬌がある。
急な修正も赤井に「ごめんね~」と頼まれれば、「いいですよ」と笑顔で答えてしまう、そんな人柄だった。
「それから今後グッズのリリースやECサイト運営でお世話になるDX本部から、SEの君島さんです」
紗理奈に紹介され、さわやかでスタイルのよい男性がスッと立ち上がった。
「初めまして、ってこともないかな? そろそろ古だぬきのようになってきたのではないかと危惧している君島と申します。SEの世界では長老が偉いなんてことは全くなく、逆に時代の最先端をゆく若手の方が頼りになります。というわけで今回の案件は、パソコンオタク界隈では稀に見るイケメン、森住柊くんにメインで担当してもらいます」
話を振られて森住が立ち上がる。
そう、会議室に入った時に彼の姿を見て乙葉はギョッとしつつも、素知らぬふりを通していた。
「業界一かっこよく、SEとしてもスゴ腕の君島さんからご紹介にあずかりました、森住と申します。君島さんの足元にも及びませんが、精いっぱい努めます。どうぞよろしくお願いいたします」
小森が「お二人とも眼福です」とにこやかに笑って拍手した。
(そんな小森さんも笑うとキラキラのオーラ。すごい、アイドルみたい)
目を奪われていると、紗理奈が乙葉に視線を送る。
「では最後に私たちマーケティング部広報課から。わたくし今田と、今後この案件をメインで担当してもらう堀井です」
紹介されて乙葉も立ち上がった。
「初めまして、広報課の堀井と申します。今回、課の垣根を越えてグッズの流通にも関わらせていただくことになりました。まだまだ至らない未熟者ですが、必ずよい結果に結びつけたいと思います。どうぞお力添えをよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げると、温かい拍手が送られた。
「今回は新たな取り組みの第一弾として、このチームで力を合わせていきましょう。よろしくお願いします」
紗理奈が締めくくり、あとは細々したスケジュールの確認をする。
「我々DXは、グッズのリリースに合せてシステムのテスト運用を重ねていきます。リリースは十一月一日に日付けが変わった瞬間ですので、その日は森住が社に泊まり込みで対応いたします」
君島に言われて、乙葉は挙手した。
「わたくしも会社で見届けます」
「そう。それならその時間は堀井さんもDX本部に顔を出してくれるかな? 簡易的だけど、仮眠室もあるから」
「かしこまりました。よろしくお願いいたします」
最後は柊を見て頭を下げると、短く「よろしく」と返ってきた。
すると君島が「あれ?」と首をかしげる。
「柊、確か堀井さんと同期じゃなかったっけ?」
「はい、そうです」
「だよな。なんでそんなに他人行儀なんだ?」
「いえ、いつもこんな感じですから」
「そうなの?」
君島が尋ねるように乙葉に顔を向けた。
「あ、はい。同期は同期ですが、特に親しい訳ではありませんので」
そっけない柊の物言いに合わせて、乙葉もそう言う。
「へえ、そうなんだ。ま、これからこの案件ではタッグを組むことになる。堀井さん、あんまり愛想はよくないけど悪い奴じゃないんだ。柊のこと、よろしくね」
「仕事ですので、こちらこそよろしくお願いします」
すると柊も何やらカチンときた様子で「仕事の時はよろしく」と冷たく答えた。
「あらあら? なんだか思春期の中学生男女みたい。これから楽しみね」
どういうことかと首をひねる乙葉に、紗理奈はふふっと笑っていた。
会議室の前方に紗理奈が立ち、集まったメンバーを見渡した。
「まず今回のコラボグッズをインフルエンサーとやり取りして企画してくださった、マーケティング部企画開発課の小森さん」
コの字に並んだ長テーブルの端に座っていた、華奢な女性が立ち上がる。
「初めまして、マーケの小森です。SNSや動画サイトで今一番若い女性に人気があるインフルエンサーのあーみゃさんと、色々相談しながらグッズを作らせていただきました。コスメやポーチ、アクセサリーなどから始めましたが、ゆくゆくはアパレル関係もという野望を抱いております。まずは第一弾のグッズを軌道に乗せることを目標にしています。どうぞよろしくお願いいたします」
自分より少し若く見える小森は、髪型もファッションも雑誌から抜け出したように華やかだと思いながら、乙葉は皆と一緒に拍手を送る。
(すごいなあ、もうしっかり自分の企画をモノにしてるって感じ。インフルエンサーと直接やり取りしてるっていうのが、既にすごいよね。着ているお洋服もオシャレだし。カーディガンの袖を通さないで肩に掛けただけって、よく落ちないよね)
そんな妙なことまで考えていると、紹介は同じ企画開発課の赤井に移る。
三十代の赤井は眼鏡をかけたちょっとふっくらした体型で、憎めない愛嬌がある。
急な修正も赤井に「ごめんね~」と頼まれれば、「いいですよ」と笑顔で答えてしまう、そんな人柄だった。
「それから今後グッズのリリースやECサイト運営でお世話になるDX本部から、SEの君島さんです」
紗理奈に紹介され、さわやかでスタイルのよい男性がスッと立ち上がった。
「初めまして、ってこともないかな? そろそろ古だぬきのようになってきたのではないかと危惧している君島と申します。SEの世界では長老が偉いなんてことは全くなく、逆に時代の最先端をゆく若手の方が頼りになります。というわけで今回の案件は、パソコンオタク界隈では稀に見るイケメン、森住柊くんにメインで担当してもらいます」
話を振られて森住が立ち上がる。
そう、会議室に入った時に彼の姿を見て乙葉はギョッとしつつも、素知らぬふりを通していた。
「業界一かっこよく、SEとしてもスゴ腕の君島さんからご紹介にあずかりました、森住と申します。君島さんの足元にも及びませんが、精いっぱい努めます。どうぞよろしくお願いいたします」
小森が「お二人とも眼福です」とにこやかに笑って拍手した。
(そんな小森さんも笑うとキラキラのオーラ。すごい、アイドルみたい)
目を奪われていると、紗理奈が乙葉に視線を送る。
「では最後に私たちマーケティング部広報課から。わたくし今田と、今後この案件をメインで担当してもらう堀井です」
紹介されて乙葉も立ち上がった。
「初めまして、広報課の堀井と申します。今回、課の垣根を越えてグッズの流通にも関わらせていただくことになりました。まだまだ至らない未熟者ですが、必ずよい結果に結びつけたいと思います。どうぞお力添えをよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げると、温かい拍手が送られた。
「今回は新たな取り組みの第一弾として、このチームで力を合わせていきましょう。よろしくお願いします」
紗理奈が締めくくり、あとは細々したスケジュールの確認をする。
「我々DXは、グッズのリリースに合せてシステムのテスト運用を重ねていきます。リリースは十一月一日に日付けが変わった瞬間ですので、その日は森住が社に泊まり込みで対応いたします」
君島に言われて、乙葉は挙手した。
「わたくしも会社で見届けます」
「そう。それならその時間は堀井さんもDX本部に顔を出してくれるかな? 簡易的だけど、仮眠室もあるから」
「かしこまりました。よろしくお願いいたします」
最後は柊を見て頭を下げると、短く「よろしく」と返ってきた。
すると君島が「あれ?」と首をかしげる。
「柊、確か堀井さんと同期じゃなかったっけ?」
「はい、そうです」
「だよな。なんでそんなに他人行儀なんだ?」
「いえ、いつもこんな感じですから」
「そうなの?」
君島が尋ねるように乙葉に顔を向けた。
「あ、はい。同期は同期ですが、特に親しい訳ではありませんので」
そっけない柊の物言いに合わせて、乙葉もそう言う。
「へえ、そうなんだ。ま、これからこの案件ではタッグを組むことになる。堀井さん、あんまり愛想はよくないけど悪い奴じゃないんだ。柊のこと、よろしくね」
「仕事ですので、こちらこそよろしくお願いします」
すると柊も何やらカチンときた様子で「仕事の時はよろしく」と冷たく答えた。
「あらあら? なんだか思春期の中学生男女みたい。これから楽しみね」
どういうことかと首をひねる乙葉に、紗理奈はふふっと笑っていた。