あえかなる君へ 心からの愛を
たとえ星が見えない日でも
『乙葉ちゃーん、昨日のディナーはどうだった?』

翌日、乙葉に紗理奈から電話がかかってきた。

「紗理奈さん、とっても美味しかったですよ。ありがとうございました」
『ううん、楽しんでもらえてよかった。それで?』
「はい? それで、とは?」

その時、ソファに並んで座っていた柊のスマートフォンにも着信が来た。

「もしもし、君島さん?」

乙葉はギクリとして柊を仰ぎ見る。

「あ、夕べはありがとうございました。はい、美味しかったです」

そう答える柊の声を左耳に聞き、右耳は紗理奈の『もしもーし』という声を聞く。

「えっと、はい、何でしょう?」
『乙葉ちゃん、今柊くんと一緒にいるの?』
「あ、それはですね」

すると柊も「いや、あの」と焦ったような声を上げる。

『あー、聞こえちゃった! 柊くんの声だー。なあに、ひょっとしてお泊まり? いやーん、すてき!』
「あの、紗理奈さん」

必死に取り繕うとすると、柊がやけにキリッと「そうです、おっしゃる通り」と君島に答えた。

『乙葉ちゃん、ちょっと待って。……そうなのー? 柊くんが乙葉ちゃんと結ばれたって言ってるって』
「む、結ばれた?」
『あら、違うの?』
「いえ、そうです。おっしゃる通り」

もうどうやってもごまかせそうになく、乙葉は観念して頷いた。

『やったー、おめでとう! もう時間かかり過ぎ! でもようやくね、ああ、よかった。それで、結婚式はいつ?』
「いえ、まさか、そんな話はまだ……」
『ええー、ここからまた待たされるの? 長ーい! でも楽しみに待ってるね。それじゃあ』

そこで電話はプツリと切れた。
同じように君島との電話を終えた柊と顔を見合わせる。

「ひょっとして同じこと、言われた、よね?」
「ああ、そうだろうな」
「お二人は私たちのこと、そういうふうに思ってたのかな」
「まあ、そうだろうな」
「なんだかこの先も期待されてるみたいだけど、でもあの、私は今こうやって柊と一緒にいられるだけで嬉しいの」

すると柊は優しく微笑む。

「俺もだよ。念願叶ってようやく俺の腕の中に来てくれたんだ。感慨もひとしおだよ」

チュッと頬にキスをされ、乙葉は視線を落としてはにかんだ。

「あのね、柊のお誕生日をお祝いしたくて。今日もここにいていい?」
「は? 当たり前だろ。今日どころか明日も明後日もここにいろ」
「え? じゃあ、私の部屋は?」
「帰れると思うなよ」
「怖っ!」
「ははは、うそうそ。だけど気持ちは本当だ。乙葉、できるだけここにいて」
「うん、わかった」

今度は唇にチュッとキスをされて乙葉は立ち上がる。

「えーっと、そろそろ食事の準備しなくちゃね。あ、スーパーに買い出しに行ってもいい? バースデーケーキ作りたいの」
「いいけど、うちにはロクは調理器具ないぞ?」
「じゃあ型とかいらないティラミスはどう?」
「おお、食べたい! 今すぐ食べたい」
「ふふっ、じゃあ早速買い物に行きますか」

二人で手を繋いでスーパーに出かけた。
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