あえかなる君へ 心からの愛を
結婚式を九月三十日にする、と報告すると、またしても周りから「そんなに先!?」と驚かれる。
けれど二人にとっては思い出深い日なので、その日にしようと決めた。
式場やドレスもゆっくりと探し、その日をわくわくと待ちわびる。
柊は結婚情報誌に挟んである婚姻届を見て「ほんとにこれで受理されるのか?」と心配そうだった。
「大丈夫だって。デザインも可愛いし、これを使わない?」
「そうだな。よし、気合い入れて書こう」
式まではまだ日があるけれど、証人のサインをもらうことを考え、早めに書いておくことにした。
柊は婚姻届をローテーブルに広げると、床に正座をして深呼吸する。
「なんだか書き初めみたいね」
乙葉がからかうが、柊はどこまでも真剣だ。
「いいか、乙葉。これは言わば、男の一生の誓いの証だ。乙葉の人生を俺が必ず幸せに守り抜く。この命に換えても」
大げさだなあと言おうとして、乙葉は柊のあまりの気迫に口を閉ざした。
柊は目をつぶって大きく息を吸うと「よし」と呟いて万年筆を手にする。
一文字一文字、噛みしめるように丁寧に名前や住所を書いていった。
「うん、できたぞ」
「すごい、渾身の出来だね」
「ああ。じゃあ乙葉の番な」
「どうしよう、ここで私が書き損じたら……」
さっきまで柊の様子に笑っていた乙葉の顔からも笑みが消える。
柊と同じように正座をし、深呼吸してから左手を添えつつ丁寧に文字をしたためた。
「よし、できた!」
「でかしたぞ、乙葉。あとは証人の欄だな。今度両家に行ってサインをもらおう」
「うん。どうしよう、お父さんが書き損じたら……」
「その時はまた書けばいい」
「そうだよね……」
できれば一度で決めてほしい。
その想いが通じたのか、はたまた柊と乙葉の気迫にやられたのか、両家の父親は丁寧にゆっくりと間違えることなく書いてくれた。
「やったー、完成!」
「ああ、完璧だ」
満足気に二人で婚姻届を眺める。
「なあ、乙葉」
「なあに?」
「この婚姻届、手元に残しておかないか?」
「えっ、これを?」
「そう。役所に提出してしまえば、手元に何も残らなくなるだろう? だけどこの婚姻届こそが俺たちが家族になるたった一枚の証なんだ。大切なこの一枚を印刷して手元に置いておこう。ずっとずっと大切に」
乙葉は柊の言葉を噛みしめてから「うん!」と笑顔で頷いた。
「そうしよう。私と柊が家族になった証、記念すべき初めての一歩だもんね」
「ああ。いつか子どもが生まれたら、出生届も」
「うん、うん、すてき! 私たち家族の歩みを少しずつ重ねていくんだね」
「そうだ。俺と乙葉、二人の幸せはこれから先もっともっと大きくなるから。俺が必ず幸せにしてみせる」
「ありがとう。柊と一緒ならいつまでも幸せでいられる。私も柊を幸せにしたい。温かい家庭を作ろうね」
二人で見つめ合って微笑むと、そっと優しいキスを交わす。
「乙葉、心から愛してる。俺のたった一つのスピカ」
「私も。柊、ずっとそばにいてね」
「もちろんだ。空に輝くスピカの隣に、いつもオレンジのアークトゥルスがあるように。俺たちは二人で一つの夫婦星なんだ」
空に浮かぶ星の輝きと共に、二人の愛はいつまでも変わることなく輝き続けるだろう。
そう信じて二人は肩を寄せ合い、互いの温もりに幸せを噛みしめていた。
(完)
けれど二人にとっては思い出深い日なので、その日にしようと決めた。
式場やドレスもゆっくりと探し、その日をわくわくと待ちわびる。
柊は結婚情報誌に挟んである婚姻届を見て「ほんとにこれで受理されるのか?」と心配そうだった。
「大丈夫だって。デザインも可愛いし、これを使わない?」
「そうだな。よし、気合い入れて書こう」
式まではまだ日があるけれど、証人のサインをもらうことを考え、早めに書いておくことにした。
柊は婚姻届をローテーブルに広げると、床に正座をして深呼吸する。
「なんだか書き初めみたいね」
乙葉がからかうが、柊はどこまでも真剣だ。
「いいか、乙葉。これは言わば、男の一生の誓いの証だ。乙葉の人生を俺が必ず幸せに守り抜く。この命に換えても」
大げさだなあと言おうとして、乙葉は柊のあまりの気迫に口を閉ざした。
柊は目をつぶって大きく息を吸うと「よし」と呟いて万年筆を手にする。
一文字一文字、噛みしめるように丁寧に名前や住所を書いていった。
「うん、できたぞ」
「すごい、渾身の出来だね」
「ああ。じゃあ乙葉の番な」
「どうしよう、ここで私が書き損じたら……」
さっきまで柊の様子に笑っていた乙葉の顔からも笑みが消える。
柊と同じように正座をし、深呼吸してから左手を添えつつ丁寧に文字をしたためた。
「よし、できた!」
「でかしたぞ、乙葉。あとは証人の欄だな。今度両家に行ってサインをもらおう」
「うん。どうしよう、お父さんが書き損じたら……」
「その時はまた書けばいい」
「そうだよね……」
できれば一度で決めてほしい。
その想いが通じたのか、はたまた柊と乙葉の気迫にやられたのか、両家の父親は丁寧にゆっくりと間違えることなく書いてくれた。
「やったー、完成!」
「ああ、完璧だ」
満足気に二人で婚姻届を眺める。
「なあ、乙葉」
「なあに?」
「この婚姻届、手元に残しておかないか?」
「えっ、これを?」
「そう。役所に提出してしまえば、手元に何も残らなくなるだろう? だけどこの婚姻届こそが俺たちが家族になるたった一枚の証なんだ。大切なこの一枚を印刷して手元に置いておこう。ずっとずっと大切に」
乙葉は柊の言葉を噛みしめてから「うん!」と笑顔で頷いた。
「そうしよう。私と柊が家族になった証、記念すべき初めての一歩だもんね」
「ああ。いつか子どもが生まれたら、出生届も」
「うん、うん、すてき! 私たち家族の歩みを少しずつ重ねていくんだね」
「そうだ。俺と乙葉、二人の幸せはこれから先もっともっと大きくなるから。俺が必ず幸せにしてみせる」
「ありがとう。柊と一緒ならいつまでも幸せでいられる。私も柊を幸せにしたい。温かい家庭を作ろうね」
二人で見つめ合って微笑むと、そっと優しいキスを交わす。
「乙葉、心から愛してる。俺のたった一つのスピカ」
「私も。柊、ずっとそばにいてね」
「もちろんだ。空に輝くスピカの隣に、いつもオレンジのアークトゥルスがあるように。俺たちは二人で一つの夫婦星なんだ」
空に浮かぶ星の輝きと共に、二人の愛はいつまでも変わることなく輝き続けるだろう。
そう信じて二人は肩を寄せ合い、互いの温もりに幸せを噛みしめていた。
(完)


